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Policy(提言・報告書)  経済政策、財政・金融、社会保障 平成28年度診療報酬改定に関する要請

平成27年11月18日

厚生労働大臣
 塩崎 恭久 殿

健康保険組合連合会会長  大塚 陸毅
国民健康保険中央会理事長柴田 雅人
全国健康保険協会理事長小林  剛
全日本海員組合組合長森田 保己
日本経済団体連合会会長榊原 定征
日本労働組合総連合会  会長神津 里季生

平成28年度診療報酬改定に関する要請

平成28年度診療報酬改定にあたって、下記のとおり医療保険者関係団体の意見をまとめましたので、改定率及び改定の基本方針の策定に適切に反映されるよう、強く要請いたします。

わが国は、急速な高齢化の進展に伴い、医療費は増加の一途を辿り、25年度にはついに国民医療費が40兆円を超えました。今後、一段と高齢化が加速する中にあっては、さらなる増加は避けられない状況にあります。

国内経済は、足もとでは緩やかな回復基調が続いているものの、政府の掲げる強い経済の実現には未だ道半ばです。医療費を含めた国民の社会保障費負担の増加を抑制しなければ、労働者の手取賃金の伸びが抑えられ、消費の下押し要因となるほか、企業においても事業コストの増大に直結することから、国内外からの投資が減退し、経済成長が大きく鈍化するのではないかと懸念されます。

医療保険者の財政は、保険料収入の伸びを上回る医療費の伸びに加え、高齢者医療制度に対する支援金・納付金の増大などにより深刻な状況に陥っています。被用者保険では、20年度の現行制度創設以降、大幅な保険料率の引き上げを余儀なくされ、被保険者に重い負担を求めることで、財政危機をしのいでいますが、今後さらなる引き上げも懸念されます。また、国民健康保険においても、依然として財政状況は窮迫しており、今次法改正により財政運営主体等の見直しとともに消費税財源を用いて財政支援の拡大措置がとられたところです。

このような背景から、政府はいわゆる「骨太方針2015」において、社会保険料を含む国民の負担増は極力抑制するとの方向性の中で「社会保障関係費の伸びを、高齢化による増加分と消費税率引き上げとあわせ行う充実等に相当する水準におさめること」を目指すこととしています。

一方、先日公表された医療経済実態調査結果では、一部の病院の経営状況にやや悪化の傾向は見られるものの、医療機関等の経営は全体としてはおおむね堅調に推移していると見られます。足もとで賃金・物価に改善傾向が見られるとしても、長年に亘り賃金・物価の伸びを上回る診療報酬改定が行われてきていることを考慮すれば、次期改定において患者負担や保険料負担の増加につながる診療報酬の引き上げを行うことは、到底、国民の理解と納得が得られないものと考えます。

このため、28年度改定において診療報酬はマイナス改定とすべきです。
併せて、26年度改定と同様に薬価・特定保険医療材料改定分(引き下げ分)を診療報酬本体に充当せず、国民に還元する必要があります。

28年度改定にあたっては、急性期をはじめ患者の状態像に応じた適切な評価を行うほか、医薬品等への費用対効果評価の導入、いわゆる「かかりつけ薬剤師」の機能の発揮などによる残薬解消、調剤報酬の適正化や多剤投与の是正、新たな目標を踏まえた後発医薬品の使用促進など、全体として医療費の適正化を図っていくことを基本方針とすべきです。
また、前回改定において重点的に取り組んだ入院および外来医療の機能分化・連携の推進、長期入院の適正化、主治医機能の強化などの効果を検証し、さらに促進するための施策を講じるべきです。

28年度の診療報酬改定が、国民皆保険制度の持続性の確保と人口・疾病構造の変化に対応した医療提供体制の構築を指向したものとなることを期待します。

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