経団連 環境管理WG
指定地域内事業場に係る汚濁負荷削減目標量について、本報告案では、これまでの7次にわたる水質総量規制基準によってかなりの削減が図られてきた実績を踏まえ、「これまでの取組みが継続されていく必要がある」とされ、新たな対策が追加されなかったことは評価に値する。本記述にしたがい、今後、総量規制基準専門委員会において、水質汚濁負荷量の規制が強化されないようにすべきである。
一方、35年にわたって継続してきた総量削減については、今後、陸域からの総量削減による環境基準の達成という観点だけではなく、豊かな海の創生活動のあり方といった観点から、防災対策との両立を確保しつつ、各省との連携のもとで水域ごとに海域の対策を推進することが重要である。このため、制度の考え方の抜本的な見直しを含め、効果的な制度のあり方について、さらに検討を深めていくべきである。
具体的には、これまでの総量削減の取り組みの結果について、陸域からの総量削減の効果や富栄養化発生のメカニズムを検証し、その評価を行うとともに、青潮や赤潮による漁業被害や臭気・景観といった問題を解決するための海域の対策など、より総合的な対策を推進すべきである。
- <該当箇所>
2頁 1-2 汚濁負荷量の状況 8頁(2) 産業系汚濁負荷量の削減対策 12頁 2-2 環境基準の達成状況 16頁 3-1 水質汚濁に影響を与える要因 20頁 4-2 対策の在り方
- <理由>
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◇ 産業界は、閉鎖性海域のステークホルダーとして、総量削減に対応し、可能な限りの設備投資により、事業場等からの排水を適切に処理したうえで公共用水域に排出する徹底した排水管理を行ってきた。その結果、産業系のCOD負荷量は削減目標を達成し、これ以上の削減は困難な水準に至っている(報告案26頁、表3)。他方、総量削減は、環境基準を達成・維持することで閉鎖性海域の水質汚濁を防止するための制度であるにもかかわらず、汚濁負荷量が着実に減少している中でも環境基準達成率は不十分かつ横ばいを続けている(報告案58頁、図22)。しかし、報告案では、その理由に関する科学的な評価が十分になされていない。
◇ 陸域からの負荷量の削減だけでは、水質改善の効果に限界があるのであれば、藻場や干潟の造成、深堀の埋め戻しなどの海域の対策をとる必要がある。