一般社団法人 日本経済団体連合会
安倍内閣が掲げる「3本の矢」のうち民間投資を喚起する成長戦略を実現するには、国内外の企業がわが国において積極的に事業活動を行えるような制度・環境を整備することが不可欠であり、そのために、公正かつ自由な競争を担保する競争法・競争政策が重要な役割を果たすことは言うまでもない。とりわけ今日、グローバルな競争に対応して競争法・競争政策を国際的にも調和のとれた透明・公正なものとすることは極めて大きな意味を持つ。
しかしながら、わが国の独占禁止法は、公正取引委員会による事後審判制度という国際的にみて特異な制度とともに、違反事件の審査手続についても先進国の標準とされる最低限のデュープロセスさえも確保されておらず、国際的整合性からみて極めて異質な仕組みとなっている。
とりわけ審判制度については、独禁法違反の疑いが生じると、公正取引委員会が審査を経て課徴金納付命令等の処分を下し、これに不服がある場合は審判を申し立てることとなるが、その審判の主宰者も公取委である。公取委がいわば検察官と裁判官を兼ねるような仕組みとなっており、不服申立ての仕組みとして極めて中立性・公平性を欠くものである。経団連では、かねてより、公正取引委員会による審判制度を廃止し、違反事件に対する第一審機能を司法手続に移すよう提言#1してきたところであるが、近年では、日本国内企業のみならず海外の経済界からも強い批判が寄せられるに至っている。
さらに、近年の独禁法改正において公正取引委員会の執行力の大幅強化が行われ続けていたことを考えるならば、これに見合った手続の充実化を行い、独占禁止法の公平性・中立性を国際標準まで引き上げることは急務である。
こうした経済界の主張を踏まえ、2010年3月、第174回通常国会において、公取委による審判制度を廃止し、独禁法違反事件に対する争いについては裁判所で行うこととする独禁法改正法案が政府から提出された。また、同法案では、違反事件に関する審査手続に関しても、国際標準に照らして一定の改善が加えられたものであった。経団連では、同法案の早期成立を強く期待し、再三にわたり審議促進を求めてきたが、同法案は一度も審議されることのないまま昨年11月の衆議院解散により廃案となっている。
経済のグローバル化が進む経済環境においては、国内外の企業が安心して事業活動を行えるよう、競争環境基盤についてもイコールフッティングを確立することが必要である。
まずは、先般廃案となった独占禁止法改正法案を、今国会に速やかに再提出し、迅速に成立させることで、グローバルな競争法・競争政策の実現に向けての第一歩を進めることは、成長戦略の観点からも重要であると考える。
#1 「独占禁止法の抜本改正に向けた提言 -審査・不服申立ての国際的イコールフッティングの実現を-」(2007年11月20日)、「公正取引委員会による審判制度の廃止及び審査手続の適正化に向けて」(2009年10月20日)、「公正取引委員会審判制度の早期廃止を再び求める」(2011年10月18日)