2012年12月26日
一般社団法人 日本経済団体連合会
一般社団法人 日本経済団体連合会
わが国は依然として課題山積、内憂外患の状況にある。国民と企業が自信を取り戻し、国際社会に日本の変化と新たな可能性を示すためには、成長を通じて真に安定した経済を構築していかなければならない。日本経済の再生こそ、新内閣に対する国民の期待である。
グローバルな競争圧力が日に日に強まる中、経済活性化の阻害要因となる規制や制度を改革し、事業環境の国際的なイコール・フッティングを確保することは急務となっている。一刻も早く、TPP交渉への参加等による自由貿易体制の推進を含め、民間活力が十分発揮できイノベーションが推進される環境を整備し、国内外から投資と雇用を呼び込むことによって経済活性化を図り、デフレから早期に脱却する必要がある。
新内閣には、国民本位・政策本位の見地から与野党の協力を確保し、以下の重要政策課題に迅速果敢に取り組み、成果を示していただきたい。経団連としても支援する。
記
- 1.震災からの本格復興
- 2.成長促進的な経済政策の実行
- 3.エネルギー・環境政策の抜本的な再構築
- 4.持続可能で成長と両立する財政・社会保障改革の推進
- 5.諸外国との協力強化
以上
(別紙)
当面の重要政策課題
1.震災からの本格復興
復興特区の大幅な拡充や関連手続の簡素化、復興事業における民間活力利用の一層の推進により、被災地への投資を呼び込み、雇用を拡大する。被災地の本格復興を新たな日本の創生のシンボルとする。
2.成長促進的な経済政策の実行
- (1) 速やかに補正予算ならびに本予算を編成・執行し、成長を促す環境を整備する。
- (2) 積極的通貨外交の展開を通じて、米国、EUをはじめとする関係諸国と協議を行うとともに、政府・日銀が一体となってあらゆる手段を講じ、為替レートの急変動を回避しつつ、着実な円高是正を図る。
- (3) 国・地方をあわせた法人実効税率をアジア近隣諸国並みの約25%に引き下げる。地方法人特別税を廃止する。研究開発促進税制を大幅に拡充する。
- (4) 住宅取得に関しては、消費税率引き上げに伴って新たな負担が発生しない形での対策を実施する。消費税引き上げによる購買意欲の低下を回避すべく、自動車取得税と自動車重量税の廃止、石油関係諸税に関するタックス・オン・タックスの解消等を行う。
- (5) 自由で円滑な事業環境の整備に向け、総理直属の強力な推進体制を整備し、都市開発、情報通信、医療、介護、環境、農業等の分野において大胆な規制・制度改革を断行する。
- (6) 柔軟な労働市場を再構築し、多様な就業機会を創出する。
- (7) 産業の国際競争力の維持・向上に資する重要な輸送インフラの整備、貿易手続きの更なる改革を促進する。
- (8) 高度な電子行政の実現に向け、政府CIO関連法制度を成立させるとともに、ICTを活用した行政の効率化・透明化、行政サービスの質的向上を図る。
- (9) 地方分権改革を推進するとともに、道州制実現に向けた道筋を示す。
- (10) 大学改革や産学連携の強化を通じて、グローバル・ビジネスの推進やイノベーションの加速に貢献できる人材を育成する。
- (11) 今後の成長分野であるコンテンツ産業や観光等のサービス産業において、海外市場への積極展開や競争力強化に資する施策を展開する。
- (12) 官民連携によりパッケージ型インフラ輸出を推進する。この観点から、ODA、国際協力銀行、日本貿易保険を活用するとともに、トップセールスを展開する。
3.エネルギー・環境政策の抜本的な再構築
- (1) 2013年夏の電力需給見通しと対策を早急に明らかにする。その上で、今後3~5年の期間における経済性ある価格での電力供給確保の道筋を明確化する。
- (2) 安全性が確認された原子力発電所を地元自治体の理解を得て再稼働する。そのためのプロセスを明示し、安全性確保を大前提に、可能な限り加速化する。
- (3) 再生可能エネルギー固定買取制度、地球温暖化対策税は、早急に見直す。
- (4) 中長期のエネルギー政策は、原子力を含む多様なエネルギー源の維持の観点に立ち、安全性の確保を大前提に、エネルギーの安全保障(安定供給)、経済性、環境適合性の適切なバランスが確保されるようゼロベースで見直す。
- (5) 温室効果ガスの中期目標については、エネルギー政策との整合性を確保しながら、国際的公平性も踏まえ、再検討する。温室効果ガス削減策として、省エネ・蓄エネ機器等の普及促進、スマートコミュニティ推進などを行う。
4.持続可能で成長と両立する財政・社会保障改革の推進
- (1) 財政規律を保ちつつ、成長促進や競争力強化に資する政策に対して、財政資源を大胆かつ重点的に配分する。
- (2) 社会保障給付の効率化・重点化、自助・共助・公助の役割分担の明確化に向け踏み込んだ制度改革を行い、現役世代の社会保険料負担増を抑制し、持続可能な社会保障制度を確立する。次期通常国会でマイナンバー法案を成立させる。
5.諸外国との協力強化
- (1) 日米関係をわが国の外交政策の基軸とし、経済・安全保障の両面から強化する。一刻も早くTPP交渉に参加し、米国を含む交渉参加国との間でWin-Winの交渉成果を共有する。防衛関連の産業協力を推進する。
- (2) TPPとともに日中韓FTA、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を着実に進め、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)に向けた主導的な役割を果たす。
- (3) 日EU EPA交渉を開始・加速し、早期の合意を図る。
- (4) 中国、韓国との関係を改善する。
以上