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Policy(提言・報告書)  地域別・国別 アジア・大洋州 第3回 アジア・ビジネス・サミット共同声明 成長基盤を強化し、開かれたアジアを築く

(仮訳/英語正文
2012年7月13日

欧州の財政危機、欧州発の金融不安という問題が世界経済に大きな影を落としている。世界の多くの人々の関心が欧州経済の行方に集まる中、アジア経済については、金融危機後も比較的強い経済成長を維持してきたことを主な背景に、期待感が高まっている。

このような中、2012年7月13日、アジア12のエコノミーから14の経済団体の代表者がタイ・バンコクにおいて一堂に会して、第3回アジア・ビジネス・サミットを開催し、当面の主要経済問題について話し合った。

アジア経済界は、ミャンマー商工会議所(UMFCCI)の初参加を歓迎し、今後、積極的に連携を図っていくことを確認した。

アジア経済界は、下記の提案を総意とし、提案の達成につき各エコノミーの首脳に働きかけるとともに、アジアの経済界が連携しつつ、自らその役割を果たしていくことを確認した。

1.アジアの堅調な成長を持続するために

アジアが世界の成長エンジンとして今後も安定的かつ持続的に成長していくためには、成長基盤を強化し、内需を拡大すると同時に、外に開かれたアジア経済を構築する必要がある。アジア経済界は、民主導による持続的な経済成長を実現するため、公平かつ自由な貿易を支持し、保護主義的な措置に断固反対する。アジア経済界は、各経済地域において絶え間ない努力を行い、相互の連携強化を図ることによって、アジア地域の繁栄を主導していく。

特に、欧州の金融・財政問題が世界経済の行方を不透明にしている中で、アジアの金融協力は重要性を増している。すでに、アジア域内の貿易・投資の活性化のために重要なアジア域内通貨の安定については、本年に5月のチェンマイ・イニシアティブの資金規模の倍増が行われており、アジア経済界はこれを歓迎している。引き続き、地域の金融セーフティネットとしてのチェンマイ・イニシアティブの強化を支持し、豊富な資金と十分な経済力を有する全てのエコノミーがイニシアティブに参加することを引き続き求めていく。

アジア経済界は、アジア債券市場の形成ならびにアジアの成長に資するインフラ整備のために、アジア金融機関の参加を促すことを支持する。

2.アジア地域協力の深化

アジア地域の成長を持続的なものとするためには、域内の連結性を強化し、人、モノ、サービスが自由に往来できる環境の構築が欠かせない。アジア経済界は、将来におけるAPEC規模の地域協力の枠組であるFTAAPの完成に向け、今後も、民の立場から積極的に働きかけを行っていく。これに関連し、ASEAN、TPP、日中韓FTA、ASEAN++等のFTAAPの布石となる地域協定に向けた取り組みを歓迎する。アジア経済界は、各エコノミーの当局にFTAAPの実現に向けた具体的な行動を取るよう、働きかけていく。

3.エネルギー・環境問題への対応

アジアでは、経済の発展に伴いエネルギー需要が拡大の一途をたどっている。エネルギーの安定的な確保とその効率的な利用に向けて取り組むことが不可欠である。

アジアをはじめとする世界のエネルギー安全保障を確保するため、官民連携の下でエネルギー資源の共同開発を推進する。その際、現在二国間で推進されている事例などから、ベストプラクティスを共有する。

アジア経済界は、省エネ技術の普及に向け、引き続き連携する。省エネの推進は限られた資源の有効利用のみならず、CO2の排出削減にも資するため、最優先課題として取り組む必要がある。これに関連して、アジア経済界は、全ての主要国が責任ある形で参加する、公平で実効的な次期国際枠組の構築に協力する。

4.イノベーションの推進と人材開発

アジア地域が早晩直面するであろう少子・高齢化、資源・環境・エネルギーの制約などの課題を克服するためには、イノベーションの実現が欠かせない。イノベーションの牽引役は、ほかならぬ民間経済界であり、アジア経済界は、新たな産業や市場の創出にもつながる革新的な製品やサービスの開発や普及に取り組むと同時に、高度な技術を有する人材の交流を促進していくなど、イノベーションを担う人材育成に取り組む。

アジアにおける新技術の共同開発やその普及を円滑に進めるためには、規格の統一が不可欠である。工業規格や環境規制等、共通の規格が求められる分野において、アジア発の世界標準を作るべく、東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)などを活用し、アジアでの標準作りを推進していくことを提案する。

知的財産権の保護は、アジア域内でのビジネス保護の上でも重要であり、民間の研究開発ならびに技術移転を推進する上での必要条件でもある。併せて、域内の知的財産権制度のハーモナイゼーション、模倣品・海賊版対策の強化、ロイヤリティーの送金の自由化等も促進すべきである。

5.インフラの整備

インフラ整備は、需要を創出するだけではなく、将来の成長基盤を形成する重要な政策分野である。各国で進められている経済回廊構想や、ASEAN連結性マスタープランに代表される広域インフラ構想の具体化、ASEANと南アジア地域の連結性強化のため、優先プロジェクトの絞り込みを早急に行い、着実に実現する必要がある。なお、大型のインフラ整備には、膨大な資金を要するため、民間だけではなく、政府などの公的機関との連携が必要となる。また、インフラ整備は受入国の国内法に基づいて推進されるため、アジア経済界は、各エコノミーにおいて実用的かつ透明な官民連携(PPP)関連法制の整備を求める。アジアのエコノミーは、競合を避け、協力を促進すべく、PPPに関するプログラムを整備するとともに、その制度の整合性を図る。これによって、各エコノミーの強みを発揮することができる。とりわけ、持続的な成長に資する、高品質で環境負荷の少ないインフラ・プロジェクトが選定されるよう、入札制度の整備が求められる。

さらに、優れた省エネ・低炭素技術を普及させ、各地域における排出抑制・削減を支援・促進するため、技術移転の結果として実現した排出削減を評価し、削減目標達成に活用する二国間オフセット・メカニズムにつき、各エコノミーにおける導入を推進していく。

6.アジア域内における強固なサプライチェーンの構築

2011年は、日本の東日本大震災やタイの洪水の発生により、アジア域内のサプライチェーンの重要性が再認識された。ERIAでは、災害に強い域内サプライチェーンに関する研究を行っており、リスク評価や事業継続計画(BCP)に焦点を当てた災害マネジメントシステムの構築の必要性を強く訴えている。アジア経済界は、これらの取り組みを歓迎する。

また、地震、津波、洪水、台風などの自然災害に対し、宇宙からの観測、測位、通信などの機能を活用した防災・減災のインフラシステムの構築の推進を支持する。アジア経済界は、最近の自然災害から得られたリスク・マネジメントや持続的なサプライチェーンに関する教訓を活かして、災害に強いサプライチェーンを構築するとともに、そのために必要な物流網や流通網の自由化や円滑化を各エコノミーの当局に求めていく。

以上
※ アジア・ビジネス・サミット参加団体
経団連、タイ商業・工業・金融合同常任委員会、中国企業連合会、中国国際貿易促進委員会、インド工業連盟、インドネシア商工会議所、全国経済人連合会(韓国)、マレーシア日本経済協議会、ミャンマー商工会議所、比日経済委員会(フィリピン)、シンガポール経団連、東亜経済会議台湾委員会、工商協進会(台湾)、ベトナム商工会議所(以上、アジア12の国・地域の14経済団体)

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