2011年11月21日 【賛同団体】
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近年、グローバルな越境サービス貿易は力強い成長を遂げており、2009年には3.3兆ドルに達し、新たな雇用と富を創出している。これを可能にしたのはインターネットであり、これによって従来は貿易の対象とならなかったサービスを世界規模で電子的に提供することができるようになった。現在のグローバルな経済環境において、こうした越境サービス貿易の成長を持続させることは、これまで以上に重要である。
このような背景の下、フィナンシャル・リーダーズ・ワーキンググループ(FLWG)とグローバル・サービス・コアリション(GSC)は、世界の多くのサービス企業を代表して、サービス分野の国際貿易にとって不可欠な、越境データ流通を保護・促進するための新たな合意を求めるものである。両団体は、電子的提供が急速に拡大し続けるならば、越境データ流通は、あらゆる国で質の高い雇用を創出する上で、ますます重要になると認識している。データ処理のグローバル化を通じてインフラと技術のプラットフォームの共有が進んだことによって、大きな相乗効果が生まれ、規模の経済という点でも優位性がもたらされており、さらなる利益につながる余地も大きい。
FLWGならびにGSCは、「越境サービス貿易の主要な構成要素であるデータ流通にとって、信頼できるネットワークを通じて情報を送受信する能力は不可欠である。越境サービス貿易の本質がデータの交換であることに鑑みれば、国際的なデータ流通に対する不必要な制約は、サービス貿易の障壁となる」と述べた。
サービス貿易の急拡大に伴い越境データ流通が増加した結果、多くの政府は懸念を抱くようになっている。なかには、様々な理由に基づいて、越境データ流通に制限を課している、あるいは制限を課すことを検討している政府もある。例えば、政府は、規制上の目的から、データ・プライバシーの保護あるいはデータ・アクセスの可能性に懸念を持つかもしれない。これらの懸念は理解できるものであるが、データ流通に対する有害な制限を正当化するものではない。グローバル経済がより多くの成長機会を必要としている今日、そうした制限は、その意図にかかわらず、グローバルなサービス貿易の力強い成長を阻害するものである。とりわけ、サービスに関するデータを自国の管轄内に留めるべきとする要件は、管轄内へのデータ保存がデータ保護の促進のために必要あるいは効果的であることが説得力ある形で示されていない以上、データ流通がもたらす利益を否定するものである。
両団体は、以下の通り説明した。「各国政府は、貿易協定において、越境サービスに関する市場アクセスを約束するかもしれない。しかしながら、データ流通が不必要に阻止され、あるいは厳しく制限される場合、その約束は損なわれ、期待された利益をもたらさすことはないだろう。政府は規制を行う権限を有しているが、可能な限り市場機能や自発的なベストプラクティス、官民パートナーシップによるべきである。規制が必要な場合であっても、特定の明確な政策上の懸念に極力限定して、出来る限り貿易を制約しない形でそれを払拭するような方法がとられるべきであり、また、規制の対象となるデータに係る知的財産権を尊重するものであるべきである。」
また両団体は、「新たな合意が越境データ流通を保護・保証するために必要である」とし、そうした流通を可能とする様々な仕組みがあり得る点を指摘した。新たな貿易協定にデータ流通に関する条項を盛り込むことは一つの方法であるが、二国間・地域間・多国間の様々な関係を通じて実施される拘束力のある合意、拘束力のない合意を含め、様々な形で越境データ流通の問題を取り上げることが可能である。
さらに両団体は、以下のように述べた。「インターネットへの信頼を醸成し、越境データ流通への不必要な規制を回避することが不可欠である。引き続きグローバル経済にサービス貿易拡大の恩恵が及ぶようにする必要がある。十分な合意がなければ、サービス貿易に不可欠なデータ流通は制限され、サービス貿易は縮小し、それがもたらす恩恵は減じてしまうだろう。正式な貿易協定のもとで、あるいはそれ以外の方法で、データ・プライバシーの保護およびデータ・アクセスの可能性に対する懸念と、データを移動させる権利の保護との間のバランスがとれた合意がなされる必要がある。」
越境データ流通の問題は、2011年7月20日にワシントンD.C.で開催されたグローバル・サービス・サミットにおいて提起された。議事録は以下を参照。
http://uscsi.org/images/files/2011-GSS/ICT_Panel_Summary.pdf
- ※ JSN(Japan Services Network):
- WTOサービス交渉に関し、わが国サービス産業間で情報・意見交換を行うとともに、諸外国のサービス産業団体等との連携を推進するため、1999年に日本経団連貿易投資委員会の関係機関として設置された協議会。
- i フィナンシャル・リーダーズ・ワーキンググループ(Financial Leaders Working Group):
- 各国の金融界が参加する業界団体、フィナンシャル・リーダーズ・グループ(Financial Leaders Group)が設置する、専門家によるワーキンググループ。金融市場の公平な競争条件の確保、規制の内外無差別・透明性の確保等を目的とする。
- ii グローバル・サービス・コアリション(Global Services Coalition):
- 各国のサービス業界団体等が参加し、グローバルなサービス貿易の自由化、ビジネスの円滑化を目指す。