(社)日本経済団体連合会
資源エネルギー庁が3月31日に公表した「再生可能エネルギーの全量買取制度に関するオプションについて(以下、「オプションについて」)」に対し、以下の通り意見を述べる。
1.検討の前提
温暖化対策は、目標達成の手段に過ぎないが、わが国の中期目標は未だ決定しておらず、中期目標のうち自ら削減する分(いわゆる真水部分)も決まっていない。
また、温暖化対策は、再生可能エネルギーの活用をはじめとする電力の供給側に係る対策のみならず、電力の需要側の対策もある。さらに、電力の供給側の対策についても、原子力エネルギーの活用も考えられる。
したがって、再生可能エネルギーの全量買取制度については、わが国の中期目標とその真水部分の水準を見据えながら、原子力の推進や電力の需要側の対策等も含めた温暖化政策全体の中で、経済・雇用等に与える影響等も踏まえ検討されるべきである。
2.再生可能エネルギーの全量買取制度を検討するための視点
その上で、再生可能エネルギーの全量買取制度の導入の是非・制度設計を検討するにあたっては、以下の点に十分配慮する必要がある。
(1) 国民負担を明示したうえでの国民的な理解・合意
再生可能エネルギーの全量買取制度の導入には負担が伴うため、具体的な負担額を示した上で、国民一人ひとりの理解と合意を得ることが必要である。参考資料においては、ケースごとに標準家庭および一人当たり負担額が示されているが、地域や所得階層ごとの負担や、系統安定化対策費用も含めた負担についても、併せて明示し、再生可能エネルギーの全量買取制度を支える負担者たる国民が具体的な負担水準をイメージできるようにするとともに、十分な広報を行う必要がある。
その際、政府が導入を検討している国内排出量取引制度や地球温暖化対策税といった、その他の温暖化対策の負担も併せ、全体としての負担を示すべきである。
(2) 企業の国際競争力等経済に与える影響
再生可能エネルギーの全量買取制度の導入は、エネルギー価格の上昇につながるため、企業の国際競争力に与える影響が懸念される。したがって、制度導入の是非や、全量買取の対象とするエネルギーや施設等の検討にあたっては、この点について、極めて慎重な検討が必要である。
(3) 温暖化対策としての費用対効果
検討に際しては、温暖化対策としての費用対効果の視点も不可欠である。「オプションについて」にある通り、「負担は抑えられる制度設計」が必要である。しかし、そもそも再生可能エネルギーは、原子力エネルギーと比較すると、コストが高く、再生可能エネルギーに多くを依存することは温暖化対策としての費用対効果の観点から合理的とは言い難い。
したがって、原子力エネルギーの利用促進をはじめ再生可能エネルギーの導入以外の政策の選択肢も視野に入れ、温暖化対策としての費用対効果を高める中で、再生可能エネルギーの着実な導入を図るべきである。
(4) 電力系統の安定
再生可能エネルギーが大量に導入される場合には、電力系統の安定に悪影響を及ぼす可能性があり、その対策のための技術開発が必要となる。再生可能エネルギーの全量買取制度の検討にあたっては、技術開発のためのリードタイムを踏まえた再生可能エネルギーの導入計画を立てるとともに、技術開発のためのコスト負担について、国民的な理解を得るよう努力すべきである。