
菅原氏(右)、菅氏
経団連は11月12日、東京・大手町の経団連会館で経済財政委員会統計部会(松村圭一部会長)を開催した。経済産業省大臣官房調査統計グループ構造・企業統計室の菅原浩志統括統計官、法政大学経済学部の菅幹雄教授(総務省統計委員会委員)から、公的統計の見直しに関する取り組みや今後の課題をそれぞれ聴いた。説明の概要は次のとおり。
■ 菅原氏
経産省では統計データの精度向上を目的に、所管する公的統計のうち、特に企業活動基本調査、海外事業活動基本調査、海外現地法人四半期調査の見直しを現在検討している。これは統計調査の報告者である企業の負担軽減にも資するものである。
企業活動基本調査は重要な基幹統計調査であり、経産省所管業種のうち、従業員50人以上かつ資本金3000万円以上の約4万社が回答している。調査票は8ページに及び、調査項目も決算で開示している内容以上に詳細であるため、報告者である企業には相当な負担がかかっている。他の二つも、企業に相応の負担が生じる。
見直しに際しては、それぞれの統計調査が抱える課題とともに、統計調査全般についても、企業から幅広く意見を募ることとしたい。経産省としては、単に統計を作成して公表するだけではなく、データが政策の企画・立案に資することはもちろん、より精度の高い統計にすることを目指している。
■ 菅氏
企業活動基本調査は、経済学の分野で広く活用されている。昨今は同調査に限らず、コンピューターの発達により、多くの研究者が高度なデータ分析を実施できるようになった。このため、より早く、より詳しいデータが欲しいという統計ユーザーからのニーズが高まっており、報告者負担の軽減との兼ね合いが難しい。
報告者負担には主に、(1)報告することがそもそも不可能(2)報告は可能だが作成するために相当な手間がかかる(3)社内の多数の部署による協力が必要――の三つが存在する。しかし、これら報告者負担を軽減するため単純に調査事項を削減すれば、統計ユーザーは強く反発する。統計ユーザーはより詳しいデータを求めていることに加え、日本のデータサイエンスが遅れているという認識と危機感を持っているからである。このため、調査事項の見直しが進まず、報告者負担が大きいが故に回答率や記入率は低下している。回答データにバイアスがかかり、ミスリーディングにつながる可能性が懸念される。報告者負担がいかに大きいのか、統計ユーザーの理解を得るためには、報告者が回答に際してどのような困難に直面しているか、具体的に伝える必要がある。企業から生の声を教えてほしい。
◇◇◇
同会合での説明を踏まえ、出席した企業から、報告者負担をはじめ統計調査についての意見を経産省宛てに直接連絡することとした。
【経済政策本部】