さまざまな地域で未曾有の自然災害が発生しており、広範にわたる復興支援の必要性も高まっている。経団連(十倉雅和会長)では、かかる状況を踏まえ、東日本大震災を受けて2011年3月に設立した震災復興特別委員会を22年6月に「災害復興特別委員会」(十倉委員長、冨田哲郎委員長)へと改編し、活動を展開している。
同委員会は、10月27日、東京・大手町の経団連会館で、秋葉賢也復興大臣との懇談会を開催し、政府が新たに設立する「福島国際研究教育機構(F-REI)」について説明を聴くとともに、経済界との連携をめぐり活発に意見交換した。F-REIは、福島をはじめ東北の復興と産業基盤の構築を目指す「福島イノベーション・コースト構想」をさらに発展させ、「創造的復興の中核拠点」を目指す司令塔として23年春に福島県浪江町に設立される。機構では、(1)ロボット(2)農林水産業(3)エネルギー(4)放射線科学・創薬医療、放射線の産業利用(5)原子力災害に関するデータや知見の集積・発信――の5分野で研究開発を行うこととしている。
政府側からは、理事長に就任予定の山崎光悦復興庁参与(前金沢大学学長)、同機構の構想取りまとめにあたった政府有識者会議座長の坂根正弘コマツ顧問も参加した。
冒頭、十倉会長は、「産業振興においては、地域の中核である農林水産業や観光業の再生・強化はもちろんのこと、新たな産業基盤の早期構築に努めることが重要」と指摘。F-REIでの研究開発等が「福島県の再生はもちろんのこと、わが国の科学技術力や国際競争力の強化の源泉として育っていくことを期待する」と述べた。
秋葉大臣は、F-REIについて「いわばナショナルプロジェクトとして整備するもので、オールジャパンでのイノベーションの創出、経済成長、さらには国民生活の向上に貢献することを目指す」と紹介。F-REIの事業について、「研究開発のみならず、研究成果の社会実装・産業化も担う」「効果は浜通り地域から福島県全域、さらに全国へと広域的に波及するものでなければならない」と説明した。また、官民連携の重要性に触れるとともに、「福島浜通り地域をはじめとして『世界でここにしかない多様な研究・実証・社会実装の場』を実現し、国際的に情報発信することが重要である」と強調した。
山崎参与は、被災地や世界の課題解決に資する、国内外に誇れる研究開発を推進するためにも、有力な研究者や起業家を集結させ、イノベーションの創出が自律的に加速する好循環を形成したいとの想いを述べた。また、坂根顧問は、ドイツの産学官の「橋渡し」を行う公的研究機関フラウンホーファー研究所を例に挙げ、省庁横断的な取り組みの重要性を強調するとともに、F-REIが特色ある大学や産業づくりの中核になることへの期待を示した。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】