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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年11月10日 No.3566 「スタートアップ育成5か年計画」をはじめとする振興政策の検討状況 -スタートアップ委員会

吾郷氏

経団連は10月11日、スタートアップ委員会(南場智子委員長、髙橋誠委員長、出雲充委員長)をオンラインで開催した。経済産業省の吾郷進平スタートアップ創出推進政策統括調整官から、同省のスタートアップ振興政策および「スタートアップ育成5か年計画」(5か年計画)について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 問題認識

国内のスタートアップ投資額は年々増加し、少しずつ日本にもエコシステムが形成されてきた兆しはあるが、世界と比べてスピード感に差がある。人材・資金・事業について同時に課題を解決していくことが重要であり、5か年計画でも一体的に進めたい。

他方、市況の悪化により、昨今のスタートアップの初値時価総額、新規上場件数、ファンドの設立件数や総額には減少傾向がみられる。こうした現状のなか、政府、スタートアップ、経済界が共に力を合わせていくことが重要である。

■ 今後に向けて検討中の施策

人材について、起業家の育成が不可欠である。情報処理推進機構(IPA)の未踏プロジェクトや、起業家の卵・ベンチャーキャピタル(VC)の投資担当者等に向けた海外研修の取り組みを強化し、起業家を増やしたい。

資金面では、創業5年以内について個人保証を求めない信用保証制度を創設するとともに、スタートアップの成長を支えるため、リスクマネーを積極的かつ長期的に供給するための仕組みを拡充する。また、出口としてのM&Aが少なく、IPO(株式公開)を急ぐあまり成長機会を失っている現状を踏まえて、セカンダリー市場の整備や出口戦略の多様化に取り組む。

事業面では、大学の技術シーズと外部からの経営人材のマッチングを促し大学発スタートアップの創出につなげていく。また、政府によるスタートアップ調達が進む仕組みを構築していく。

さらに、スタートアップの海外展開を促進すべく、(1)日本貿易振興機構(JETRO)の活用(2)中小企業基盤整備機構等による国内外VCへの出資の拡大(3)海外VCを対象とするなど、VCと協調した助成制度の拡充――を行う。

■ 経済界に協力を求める点

LP(Limited Partner)出資(注1)やCVC(Corporate Venture Capital)(注2)の創設は増加しつつあるが、スタートアップを自社に組み入れるM&Aはいまだ少ない。スタートアップの創造性やチーム力を内部に取り入れるという観点から、これまで以上にM&Aに取り組んでほしい。

2022年、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がいよいよスタートアップ出資を決めた。これを機に、各企業の年金基金においても、オルタナティブ投資の対象としてスタートアップを検討してもらいたい。

また、政府としてもSBIR(Small Business Innovation Research)制度(注3)を大幅に拡充するが、政府調達だけでは購入可能な分野が限られている。企業がスタートアップの新技術・サービスを取り込む、顧客として利用するなど、さまざまなかたちで連携してほしい。

省庁だけでなく、経済界からもスタートアップ振興が重要であると声を上げることが、政策の実現を後押しする。機運醸成に向けた活動を引き続きお願いしたい。

◇◇◇

意見交換において出雲委員長は、「経団連でもこうした機運をとらえ、できることから着実に集中的に取り組んでいきたい」と応えた。

最後に、南場委員長が「エコシステムを5年でつくり上げるには、理想高く皆で取り組まなければならない。『スタートアップ躍進ビジョン』(22年3月)は意識して網羅的に取りまとめた。これを受けて、政府でも施策を強力かつ迅速に進めており心強い。経団連としても大企業側でできることは声をかけて、官民一体となって進めていきたい」と総括した。

(注1)ファンドへの出資を通じた投資活動

(注2)事業会社が自己資金でファンドを組成し出資や支援を行う活動組織

(注3)政府が中小企業による研究技術開発とその成果の事業化を一貫して支援する制度

【産業技術本部】

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