経団連(十倉雅和会長)は3月11日、提言「スタートアップ躍進ビジョン~10X10Xを目指して」を公表した。
同日、記者会見を行ったスタートアップ委員会委員長の南場智子副会長は、「5年後までにスタートアップの裾野、起業の数を10倍に、成功するスタートアップのレベルも10倍にする」という目標に触れつつ、そのポイントを紹介。「企業の規模や産学官という立場を超えて、日本経済の再興のために何が必要かという視点からまとめたもの。この目標を5年で実現しようというのが、経団連の気合である」と強調した。
同提言の概要は次のとおり。
1.スタートアップ振興の重要性
スタートアップは社会課題の解決やイノベーション創出の重要な担い手であるとともに、日本経済全体を浮揚させ、再度競争力を取り戻すための切り札でもある。わが国では、この10年間で起業数も総投資額も大幅に増加し制度面の整備も徐々に進んできたものの、スタートアップ振興に積極的に取り組んでいる諸外国との差は開くばかりである。そこで、これらの国々に追い付くべく、官民を挙げて一斉かつ迅速にスタートアップ振興を推し進めるために必要な施策を取りまとめた。
2.5年後の目標と目標を実現するために起こすべき7つの変化
提言では、5年後の目標として「わが国のスタートアップの数、成功のレベルを10倍にする」ことを掲げた。この目標を実現するために起こすべき7つの変化について記している(図表参照)。
これらの変化を起こすためには、人材、金融、税制、教育、規制改革、公共調達など、多岐にわたった施策を多様なプレーヤーが実行することが求められる。
3.7つの変化を起こすために必要な施策
7つの変化を起こすために講ずべき施策38項目を示した。以下、代表的な施策について紹介する。
(1)スタートアップ振興政策の司令塔(スタートアップ庁など)の創設
スタートアップ振興にかかる施策は非常に幅広く、所管する部局も各省庁にまたがる。そのため、効果的な実行にあたっては施策を一元的に方向付けし、推進する体制の構築が不可欠である。また、スタートアップ側からは、支援制度の相談窓口が分散しているために、必要な支援や相談をどこで受けたらよいかわからないとの声もある。
そこで、これらの課題を解決し、スタートアップ振興政策を一元的に実行する司令塔組織(スタートアップ庁など)を新たに設立することを求める。
(2)イノベーションフレンドリー企業への変容
わが国が持続的な成長を遂げるためには、大企業が既存ビジネスに安住することなく、非連続的なイノベーションにより成長を志向するとともに、スタートアップを社会全体で大きく伸ばし、その活力を取り込んで共に成長していく姿勢を持つことが求められる。具体的な施策としては、(1)人材の流動性を高め、一般社員のみならず管理職、意思決定層に至るまで多様な人材を中途採用やM&Aなどで取り込み、組織の多様性を確保すること(2)新たな成長や自らの組織のトランスフォーメーションを実現する手段として、M&Aを積極的に推進すること――などが挙げられる。
(3)体系的なアントレプレナーシップ教育の実施
起業を身近なものとし、社会に根付かせるためには教育が果たすべき役割が大きい。例えば、欧州では初等教育から体系的なアントレプレナーシップ教育が実施されている。わが国においてもこれらの事例も参考とし、アントレプレナーシップ教育のカリキュラムの導入や、アントレプレナーシップ教育に重きを置いたSEH(Super Entrepreneurship Highschool)を創設し、プログラムの開発・実施をはじめとした取り組みを産学官一体で支援することが必要である。
【産業技術本部】