経団連は11月22日、エネルギー資源価格の動向および今冬の電力需給に関するウェビナーを開催し、資源エネルギー庁電力・ガス事業部の小川要電力基盤整備課長と資源・燃料部の若月一泰政策課長から説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 原油高騰下での激変緩和策について
世界的な原油高の影響で、国内のガソリン価格は11月15日時点で168.9円/リットルと、2014年以来の高値となっており、このまま170円/リットルを超えると、08年以来の水準となる。同時に進んでいる円安により、諸外国に比べても日本へのインパクトは大きく、社会経済活動への影響が懸念される。
こうした状況を受け、11月19日に閣議決定された政府の経済対策に、原油価格高騰の激変緩和措置が盛り込まれた。原油価格高騰がコロナ禍からの経済回復の重荷になることを防ぐための時限的・緊急避難的な措置である。
同措置では、ガソリン価格が170円/リットル(基準価格。同価格は、激変緩和が趣旨であるため、1円/月ずつ切り上げ)を超えた分について、元売事業者・輸入業者に最大5円の範囲で補塡する。迅速性を重視し、国が元売業者・輸入業者にガソリン等の卸価格を抑制する原資を支給することで、小売段階の販売価格の急騰を抑えたい。ガソリン、軽油、灯油、重油を対象とし、期間は12月下旬から来年3月末までを予定している。関係者と連携しつつ、制度趣旨の周知・広報、小売価格のモニタリングを通じて、適切な運用を図りたい。
日米協調による石油国家備蓄売却(11月24日政府決定)が報道された。今後の原油価格動向を正確には見通せないが、国際エネルギー機関や米エネルギー情報局は、年明けには供給が需要を上回るとの見通しを示している。OPECプラスの動向を含め、引き続き状況を注視したい。
■ 今冬の電力需給見通しと対策
今冬の電力需給は過去10年間で最も厳しい見通しである。一般に、安定供給のためには3%の予備率(見込まれる最大需要電力に対する余剰発電容量の比率)を確保すべきとされている。今冬は1月、2月に東京エリアで3%台、西日本においても、2月は軒並み3%台と、必要な予備率は確保できているものの、相当厳しくなる見込みである。特に、東京エリアでは予備率3%を確保するため、供給力の追加公募を行ったうえでの数字である。
予備率の確認とあわせて、今年度から発電電力量余力率(発電するための燃料が十分にあるか)の確認も始めている。確保すべき余力率について確立された水準はないが、LNG在庫が十分確保できていることもあり、現在のところ、10年に一度の厳しい寒さを想定しても、必要な余力率を確保できる見通しである。
他方、燃料調達・消費動向の変化、太陽光・風力発電量の増減をはじめ不確実性は大きい。また、複数の電力会社においては11月前半の段階ではあるものの、LNGの燃料制約が発生している。
引き続き、広域機関による予備率・余力率の定期的なモニタリングや発電電力量の追加公募(燃料等の追加調達)、産業界への省エネ協力の呼びかけなどに加え、国による燃料在庫モニタリングの強化やLNG官民連絡会議による業界間の垣根を超えた協力などを通じ、安定供給に万全を期したい。
【環境エネルギー本部】