経団連は10月27日、サイバーセキュリティ委員会サイバーセキュリティ強化ワーキング・グループ(梶浦敏範主査)をオンラインで開催し、総務省の恩賀一安全・信頼性対策室長から、電気通信分野における事故の発生状況と今後の信頼性対策のあり方について説明を聴くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 総務省における電気通信事故監督体制
総務省では、通信事業者が提供するサービス内容に応じ、発生した事故の影響を受けた利用者数と継続時間を基に、重大事故と四半期報告事故に分類を行っている。重大事故については、同様の事故が他の事業者においても再発しないよう、外部有識者から成る電気通信事故検証会議で検証し、再発防止に向けた教訓等について報告書として毎年公表している。
■ 2019年度に発生した主な重大事故等
19年度の重大事故等における特徴は2つに大別される。1つ目は、人為的要因によるものである。設備の保守点検・入れ替えの際に電源の切り替えがうまくいかず通信事故を引き起こした事例や、サービスの普及拡大に向けた設備の構築作業におけるオペレーションミスにより通信障害を引き起こした事例がある。2つ目は、「クラウドSIMシステム」等の新たな技術や国内外の多様な事業者の連携に関して発生した事故である。データ容量無制限サービスの提供に際し、利用者におけるデータ容量の利用状況の確認、提供側における十分な通信容量の確保およびそのための関係事業者間の連携等が不十分であったこと等により通信事故が発生した事例がある。
■ 主な通信事故から得られた教訓等
昨年度の通信事故から得られた教訓として、まず、バックアップ設備が使えない状態において電気通信事故が発生することを認識したうえで、さらなるバックアップ設備の確保や対応手順等の体制を整備することが重要である。また、特に海外事業者から提供されるもの等の新たな技術等を活用する場合には、その仕組みやリスク等を正しく理解するとともに、事故発生時に備え、関係事業者間の連携強化、責任・役割の明確化や設備の適時適切な維持管理のための情報共有等による連携体制の構築も必要である。
通信分野はイノベーションが著しく、日々新たな技術やビジネスモデル等の導入が進んでいる。そのような技術等を構築・運用可能な人材の育成に加え、障害発生時における原因究明や利用者に対する適時適切な情報提供等も求められる。
■ 今後の安全・信頼性対策のあり方
通信ネットワークやサービスは、Society 5.0の実現に向けて不可欠な基盤を成すものであることから、日々重要性が増しており、安全・信頼性の確保が求められている。5Gネットワーク以降の時代を見据え、近年増加しているサイバー攻撃や深刻化する自然災害への対応、関係省庁等との連携強化に加え、日々進歩している新たな技術等への迅速な対応が可能な環境整備等に努めていきたい。
【産業技術本部】