経団連は8月25日、東京・大手町の経団連会館でサイバーセキュリティ委員会(遠藤信博委員長、金子眞吾委員長)を開催し、慶應義塾大学の土屋大洋総合政策学部長から、「サイバーセキュリティの地政学」をテーマに説明を聴くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。
■ サプライチェーン上でのサイバーリスク
サイバー攻撃を仕掛けてくる者を特定することは非常に困難である。昨今、サプライチェーンは非常に複雑化、グローバル化が進んでいる。サプライチェーンをたどっていくと、製造国のみで部品を調達していることは稀であり、他国がサプライチェーン上、関与している場合がほとんどである。サプライチェーン上でのサイバーリスクは、製造段階で部品を組み込む場合や、配送途中で完成品を改造する場合などが考えられるが、いずれの場合も相当専門的な知識がないと攻撃を見抜くことは難しい。ただし、サイバー攻撃をするための機器を端末に組み込んで情報を窃取することは、技術的な見地から非現実的と考えている。
■ サイバー空間の安全保障
安全保障の領域として、従来の陸・海・空にとどまらず、新たな領域として、宇宙とサイバー空間が追加されている。サイバー空間というと、目に見えないものをイメージするが、実際には通信機器、通信チャンネル、記憶装置から成る物理的なものである。日本は島国であり、国際通信のほとんどすべてを海底ケーブルにより行っていることを認識しておく必要がある。
東京でオリンピック・パラリンピックを開催するにあたっては、過去の大会の例を踏まえ、サイバーセキュリティの確保に万全を期す必要がある。
また、重要インフラについては、国家安全保障の観点から、政府と民間企業間でのさらなる連携の強化を期待している。
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講演後の質疑応答では、諸外国における特定重要インフラ保護の取り組みについて質問があり、土屋教授から、英国の事例が紹介された。
【産業技術本部】