経団連は11月24日から27日にかけて、篠原弘道副会長を団長として、8社9名で構成されるミッションをイスラエル(エルサレム、テルアビブ)に派遣した。スタートアップ、デジタルヘルス等の領域において、エコシステムを形成し、世界に先駆けた取り組みを進めているイスラエルの最新技術や現地動向の把握を目的に、政府機関、経済団体、ベンチャー企業、ベンチャーキャピタル等、19の組織を訪問した。概要は次のとおり。
■ スタートアップ・エコシステム
経済産業省、イノベーション庁、イスラエル製造業協会、ベンチャーキャピタルを訪問。イスラエルでは、軍事研究を除き、年間GDP比4.5%もの研究開発投資が実施される。これを背景に年間1000社近いスタートアップが誕生し、総数は8000社に上る。政府はスタートアップに対し巨額の予算を確保し、出資や海外企業とのマッチングに取り組む。また、膨大な数のスタートアップの情報を把握し、海外の投資家や企業の関心に応じたきめ細やかなマッチングを実施している。民間のインキュベーターも大きな役割を果たす。
■ モビリティ分野
3社を訪問。高度なソフトウエア技術を背景に、自動運転の実現に向けたさまざまな技術開発、社会実装がスタートアップを通じて実施される。自動運転技術は欧米の主要自動車メーカーに展開。
■ サイバーセキュリティ分野
1機関、2社を訪問。サイバーセキュリティに関して、軍を中心とするエコシステムが形成されている。いずれの企業もIoTの普及やフィジカルとサイバーの融合に伴う課題を扱う。
■ エドテック分野
2社を訪問。高度なソフトウエア技術を背景に、受講者のエンゲージメントを高めるオンライン教育プラットフォームが発達している。
■ デジタルヘルス分野
6社を訪問。デジタルヘルスが国家戦略の一つに掲げられており、軍事等の領域で培ったAI、センサー等の技術を活用したスタートアップが多数存在している。いずれも、高齢化の進展する日本を魅力的な市場としてとらえている点が特徴。
■ 所見と今後の期待
イスラエルには、さまざまな主体間で技術や人材が緊密に連携、循環し、イノベーションを生み出すエコシステムが存在している。これらを国内外の投資家や企業とつなぐ仕組みが官民連携のもとに構築されている。それぞれのスタートアップは、明確なミッションを掲げ、最先端の技術を迅速に社会に実装している点も特徴である。
今後の両国企業間の連携にあたっては、(1)互いが有する技術を持ち寄って実装する(2)0から1にすることが得意なイスラエルのスタートアップが生み出したものをわが国企業が1を100にするようにスケールアップする(3)複雑な日本市場への進出をローカルパートナーとして支援する――といった相互補完的な関係を築くことが望まれる。
【産業技術本部】