経団連は11月7日、東京・大手町の経団連会館で資源・エネルギー対策委員会企画部会(海寳益典部会長)を開催し、資源エネルギー庁の稲邑拓馬エネルギー制度改革推進総合調整官から、政府における最近のエネルギー政策の検討状況について説明を聞いた。概要は次のとおり。
■ 電力制度改革の現状
人口減少により、今後大幅な電力需要の増大が見通せないなかで、導入が進む再生可能エネルギー(再エネ)の主力電源化、老朽化した送配電設備の更新、デジタル化の推進といった電力ネットワークの構造的変化が要請されている。
こうした状況を踏まえ、8月に審議会で電力制度改革の方向性が取りまとめられた。具体的には、(1)ネットワーク形成のあり方の改革(2)費用の抑制と公正な負担の実現(3)託送料金制度改革(4)次世代型ネットワークへの転換(5)レジリエンス・災害対応強化――が挙げられている。
当初は、同じく8月に改革の方向性が取りまとめられたFIT制度(再エネの固定価格買取制度)の抜本見直しに向けた議論とあわせ、2本の柱で審議会の議論を進めていく予定だったが、9月に台風15号に伴って千葉県を中心に長期停電が発生し、レジリエンスの向上と災害対応の検証が課題として加わることになった。
■ レジリエンスの強化
台風15号に際しては主に情報収集・発信における課題が浮き彫りになった。ドローンの活用やマクロデータに基づく復旧見通しの策定に取り組んでいくとともに、電力会社間はもとより、自治体、自衛隊、石油業界など関係各者との協力体制を強化する必要がある。円滑な連携に向け、災害時等に電力会社が保有する個別情報(各家庭の電力使用情報等)を提供する仕組みの整備も進める。
ハード面では、強風で2基が倒壊した鉄塔の技術基準を検証する必要がある。1970年代に集中的に整備された送配電網の老朽化も急速に進みつつある。コストを最小化しつつ強靱な送配電網を整備するという難しい課題に、託送料金制度上の工夫などを通じて取り組みたい。
また、分散型電源が現実的な選択肢となりつつあるなか、特に山間部など遠隔地では、大規模系統と接続せず、小型発電機や蓄電池により電気を地産地消する方が経済性とレジリエンスの両面に優れる場合が発生し得る。そうした選択肢を取り得る制度整備も行いたい。
こうした対策を通じた持続可能な電力システムの構築に向けて、新たに設置した審議会等での議論を進めていく。
■ FIT制度の抜本見直し
FIT法(再生可能エネルギー特別措置法)は2020年度末までの抜本見直しが規定されており、現在、審議会で具体的な制度設計の議論が進んでいる。
コストが下がっている、ないし下がると見込まれる「競争電源」は、一定水準の補助で投資インセンティブを確保しつつ市場統合を図っていく。市場価格に一定のプレミアムを付与するFIP(Feed-in Premium)制度の導入も視野に検討を進めている。
コスト低下が進んでいない電源については、支援の対象を地域に密着して価値を生み出す「地域活用電源」に絞り込む方向で検討している。
このほか、太陽光パネルの廃棄費用を外部積み立てする仕組みなどについても検討していきたい。
【環境エネルギー本部】