経団連は6月13日、都内で資源・エネルギー対策委員会(加藤泰彦委員長、市川秀夫委員長)を開催し、資源エネルギー庁の小澤典明資源エネルギー政策統括調整官から、わが国を取り巻くエネルギー情勢と第5次エネルギー基本計画(案)について説明を聞いた。概要は次のとおり。
■ わが国を取り巻くエネルギー情勢
エネルギーミックスにおいてしばしば論点になるのは電源構成だが、エネルギー需要の過半は輸送や熱利用等の非電力用途が占めている。一次エネルギー需給全体でみると、今後とも化石燃料が重要な役割を果たす。明治以来の150年間を振り返っても化石燃料の重要性は一貫している。それを代替し得るエネルギー源を模索してきたのがエネルギー選択の歴史である。
東日本大震災後、エネルギーの自給率は低下し、コストは上昇し、CO2排出は増加した。こうした課題に対応すべく、第4次エネルギー基本計画や2030年度のエネルギーミックスを策定したのが3~4年前のことである。
■ エネルギー基本計画改定に向けた検討
今般のエネルギー基本計画の改定に向けて、2030年に向けた課題を総合資源エネルギー調査会基本政策分科会で、パリ協定を踏まえ2050年を見据えた戦略をエネルギー情勢懇談会で、それぞれ検討してきた。
2050年シナリオの検討にあたっては、海外の事例も参考に議論を進めてきた。例えば2010年から2015年にかけての英国の電力需給をみると、省エネに取り組みつつ、再生可能エネルギーを増加させ、原子力発電量を維持したため、火力比率が下がった。家庭用電気料金は1キロワット時当たり18円から27円へと小幅な上昇にとどまっており、コストを抑制しつつCO2も削減できていると評価される。
一方ドイツは、再エネの導入を拡大したが、脱原発の方針のもと原子力を減少させた。結果、火力発電量は横ばいであり、CO2もほとんど削減できていない。他方、家庭用電気料金は2015年時点で1キロワット時当たり40円に上り、国民負担が増大している。
現在、安価でCO2排出の少ない電力供給を実現しているのはスウェーデンやフランス、すなわち水力や原子力の比率が高い国である。ドイツの排出係数は低いとはいえず、震災後火力依存が高まっている日本も高い水準にある。
■ エネルギー基本計画(案)の概要
今般提示しているエネルギー基本計画(案)は3章で構成されており、1章は総論、2章は2030年、新設の3章は2050年について記載している。
2030年に向けては、2030年度エネルギーミックスの実現に取り組んでいくことが大きなメッセージである。省エネ、再エネをはじめ各分野で施策を進めていく。
2050年に向けては、主要国の政策を比較検討しつつ、わが国固有のエネルギー環境も考慮して、あらゆる選択肢の可能性を追求していく。
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講演後、パブリックコメントへの対応として、「第5次エネルギー基本計画(案)への意見」を審議し、取りまとめた。
【環境エネルギー本部】