経団連では、企業関係者にエネルギー問題への関心をより一層高めてもらうことを目的に、今年度から、さまざまな広報活動を展開している。2017年10月30日にセミナー「需要家の視点からエネルギーを考える」を開催した(11月30日号既報)ほか、経団連の月刊誌・ウェブサイトでエネルギー関連情報を提供している。
今般、この一環として、電気事業連合会との共催で、昨年12月19日および1月17日に、福島第一原子力発電所等の視察会を開催した。40名の定員に対し企業経営者をはじめ約100名の申し込みがあり、廃炉の進捗状況や福島の復興への関心の高さをうかがわせた。
■ 廃炉作業の進捗状況
東京電力ホールディングスは現在、福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等に向けた「中長期ロードマップ」に沿って、使用済燃料の取り出し作業を進めている。あわせて、燃料デブリの取り出しに向けて、ロボットによる原子炉格納容器の内部の撮影等も行っている。汚染水対策としては、(1)汚染源を取り除く対策(多核種除去設備「ALPS」による汚染水浄化等)(2)汚染源に水を近づけない対策(凍土方式の陸側遮水壁の設置等)(3)汚染水を漏らさない対策(海側遮水壁の設置、溶接型タンクの増設等)――に取り組んでいる。
参加者は、溶接型タンクなどの超重量物を輸送する台車や大型クレーン等が投入されるなど、本格的な廃炉作業への準備が整いつつある様子や汚染水対策の設備を視察した。また、貯蔵されているタンク内の水は、浄化が完了した処理済水であることや、地面の舗装(フェーシング)等により、事故当時から放射線量が大幅に低減していることなどについて説明を受けた。
東京電力ホールディングスの増田尚宏常務執行役(廃炉・汚染水対策最高責任者)からは、「通常の作業現場と同じように、整然と作業に取り組むことができる環境整備を進めている。廃炉の完遂までには長い年月を要する。一歩一歩着実に進めていきたい」とのあいさつがあった。
■ 楢葉遠隔技術開発センター
廃炉を推進するための研究施設として、16年4月にロボット等の遠隔操作機器・装置の開発・実証試験を行う日本原子力研究開発機構「楢葉遠隔技術開発センター」の本格運用が開始された。参加者は、同センターの没入型バーチャルリアリティーシステムを体験したほか、実規模実証試験および要素試験設備やエリア内施設の説明を受けた。
■ 福島復興に向けた東京電力の取り組み
東京電力ホールディングスの石崎芳行福島担当特別顧問から福島の復興に向けた同社の取り組みについて、次のとおり説明があった。「13年1月の福島復興本社設立以降、1人でも多くの皆さまに帰還いただけるよう、社員延べ約39.7万人が清掃や片付け等の復興推進活動に参加した。また、国や自治体の除染活動に延べ約26.8万人が対応してきた。このほか、原子力損害賠償への対応、風評払拭に向けた活動等にも取り組んでいる。福島への責任を果たすべく、引き続き活動を続けてまいりたい。経団連ならびに会員企業の皆さまにも引き続きご協力いただきたい。」
【環境エネルギー本部】