経団連は9月20日、東京・大手町の経団連会館でバーバラ・ジャッジ英国経営者協会会長との懇談会を開催し、“Brexit”の及ぼす影響と英国における女性活躍の現状について講演を聞くとともに意見交換を行った。
柄澤康喜女性の活躍推進委員長の進行のもと、冒頭、吉田晴乃審議員会副議長・女性の活躍推進委員長から、「日本ではBrexitがネガティブにとらえられているが、ジャッジ会長はそれを1つのチャンスとしてとらえている。女性リーダーとしてのご自身の経験とともに、英国の経済界に身を置く立場からさまざまなお話をいただきたい」とのあいさつがあった。ジャッジ会長の講演の概要は次のとおり。
■ Brexitの帰結
日本は英国にとって10番目に大きな貿易相手国であり、英国は日本にとって17番目に大きな貿易国である。英国で昨年生産された170万台の車の半分は、トヨタ、日産、ホンダといった日本車であり、在英国日本企業は1000社に上る。多くの日本企業は、英国をEUのバックドアとして使っている。
いま、欧州は不確実性であふれている。Brexitによってすべてが変わったが、同時にBrexitはさまざまな可能性をもたらす。英国経営者協会の会員の81%は欧州のビジネスとつながりを持っており、今後のEU離脱交渉のなかで、英国にとって一番よい条件を勝ち取れるかに注目している。
EUは、英国がEUに制裁金を払うまで交渉に応じないとのことだが、経済界としては、2019年3月までディールがない状況は避けたい。そこで、移行規定を求めるとともに、19年3月から2~3年間は現状を維持する“Soft Brexit”を望んでいる。
英国がEUに支払う制裁金の額を含め、今後、どのように展開するか確実にはわからないが、英国にとって日本との関係が最も重要なものの1つであることに変わりはない。メイ首相も日本との関係を重要視している。
■ 女性活躍の進展
かつて、日本、英国、米国のような国では、大学を卒業した女性のほとんどは就職しなかった。しかし、昨今では状況が変わりつつある。英国についていえば、多くの若い女性が仕事で成功を収めており、男性よりも稼いでいる。働く女性が年齢を重ねると仕事からドロップアウトしてしまうという問題は依然あるが、11年から15年にかけて、女性取締役は倍に増え、今では企業の取締役全体の29%を占める。また英国議会では議員の3分の1が女性である。
■ 日本でのさらなる女性活躍に向けて
日本のように人口減少が進む国で、女性という人材を活用しない手はない。日本で女性が存在感を増すためには、(1)女性が働きやすい税制を実現すること(2)飲み会に参加しないと出世できないような企業のカルチャーは変えること(3)女性の育児を助けるための外国人材を受け入れること(4)駅に保育施設を設置すること――が重要である。
世界のリーダーをみると、女性が中心にいることも多い。新しい世界を形づくるチャンスは女性にある。Brexitについても、女性の力で正しい決着が得られることを期待している。
◇◇◇
その後の意見交換では、政治・経済界における女性リーダーのさらなる活躍に向けた施策や、EU離脱に向けた移行措置のあり方などについて、活発な意見交換が行われた。
【政治・社会本部】