政府の総合資源エネルギー調査会は、年内の中間取りまとめを目指し、発電・小売り分野における競争活性化の方策や、自由化のもとでの公益的課題への対応についての検討を開始した。経済性ある価格での電力の安定供給に向けた施策となるか、注目されるところである。
そこで経団連は1日、東京・大手町の経団連会館で資源・エネルギー対策委員会企画部会(長井太一部会長)を開催し、資源エネルギー庁の小川要電力市場整備室長と曳野潔電力需給・流通政策室長から、電力システム改革の進捗状況と今後のあり方等について説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。
■ 電力分野の競争状況
(1)高圧・特別高圧
過去2年間で新電力のシェアが急拡大し、2015年度は約7.6%となったが、産業用のシェアは低い状態にとどまっている。(2)低圧
今年4月の小売りの全面自由化後、新電力ならびに旧一般電気事業者内の切り替え(規制→自由)の合計件数は、全体の5.8%である。競争が進んでいないという批判もあるが、自由化が進んだ欧州と比しても順調な滑り出しである。(3)新電力の電力調達
6割を相対取引で調達している。調達電力の約6割をLNG(液化天然ガス)が占める。一方、ベースロード電源には、石炭火力に一定程度アクセスできているが、原子力や一般水力には限定的である。
■ 電力システム改革の貫徹に向けた検討課題
(1)ベースロード電源市場
石炭火力や大型水力、原子力等の安価なベースロード電源の大部分は、大手電力会社が保有しており、新電力が十分な競争力を持てない。そこで、ベースロード電源を売買する市場を創設し、新電力のアクセスを容易にしたい。(2)容量メカニズム
自由化により電源投資の予見可能性が低下し、必要な供給力や予備力を確保するための電源設備の不足が懸念される。そのため、欧米先進国の事例も参考に、発電能力容量に応じ、発電所が稼働していなくても一定の収入を得られる仕組みの導入を検討している。(3)非化石価値取引市場
エネルギー供給構造高度化法により、小売り電気事業者には、2030年度に非化石電源の調達比率を44%にすることが求められる。目標達成を後押しするとともにFIT制度(再生可能エネルギー固定価格買取制度)による国民負担を軽減するため、非化石電源の非化石価値を顕在化し、取引を可能とする制度を導入したい。(4)廃炉に関する負担のあり方
廃炉に伴う費用は原子力事業者が負担すべきであるが、例外的に一括費用認識を回避するための措置を講じている。現行制度では規制料金による費用回収が前提となっている。規制料金撤廃後は、託送の仕組み等による費用回収を検討している。
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講演後、エネルギー分野の規制改革要望(16年度)の審議を行った。
【環境エネルギー本部】