経団連は4日、11月の「テレワーク月間」のスタートにあたって、総務省とともに東京・大手町の経団連会館で「テレワークシンポジウム」を開催した。経団連会員企業から約300名が参加した。
冒頭、主催者を代表して、金子めぐみ総務大臣政務官が「ICTを活用した時間や場所にとらわれない働き方であるテレワークは、子育て世代やシニア世代を含めて、あらゆる国民が一人ひとりのライフステージに合った生活スタイルを実現できるツールであり、一億総活躍社会の実現、働き方改革にも寄与する。総務省としてもセミナーの開催、企業への専門家派遣、先進企業の表彰等の支援を行っている。企業の取り組みこそ重要であり、推進していただきたい」とあいさつした。
続いて、吉田晴乃経団連審議員会副議長が、日本、カナダ、アメリカ、イギリスの情報通信業界でグローバルにキャリアを積んできた自身の人生経験に基づき「デジタル時代の女性の活躍」をテーマに基調講演を行った。講演のなかで上映されたビデオでは、「人口減社会に突入した日本が経済成長するためには、女性の活躍が重要」とのメッセージが紹介され、テレワークによる仕事と家庭の両立の重要性が示された。吉田副議長自身も、母親・BTジャパン社長・経団連副議長・規制改革推進会議委員という四足のわらじを履いており、いつでもどこでも仕事ができるからこそこなせるという。講演の最後には「テクノロジーを駆使することで、いくつもの人生をパラレルに過ごせるようになる。女性も男性も自己実現できる新しい社会―第4次産業革命・Society 5.0―を一緒につくっていきたい」との発言があった。
パネルディスカッションではテレワークマネジメント代表取締役の田澤由利氏の進行のもと「働き方改革とテレワーク」をテーマに議論が交わされた。
東京急行電鉄経営企画室NW事業担当の永塚慎一氏からは、出勤と在宅の間としてサテライトオフィスを活用したテレワークの紹介があった。このなかで「オフィスやカフェ、在宅などと比べても集中できるとの調査結果も出ている。テレワークが普及して通勤ラッシュも分散されるとよい」との発言があった。
テレワーク導入時について、ボッシュ副社長の森川典子氏からは「人事主導でなく、従業員主体のボトムアップ方式で導入を検討したことが成功につながった。トライアルも重要である。また、仕事の棚卸しを行うのでその過程で生産性も上がった」との説明があった。
倉貫義人氏が社長を務めるソニックガーデンは、効率的な働き方を追求した結果、社員全員がリモートワークを行っている。倉貫氏は「離れていてもチームで働くことを目指している。勤怠管理のために、社員の作業時間と画面キャプチャを確認できるシステムを導入している」と紹介。飲み会もリモートで行われるとのことだ。
三菱東京UFJ銀行執行役員人事部長の竹川浩史氏からは「育児・介護等の制約を抱える社員も増えてきており、働き方改革として在宅勤務制度を今年導入した。銀行は顧客情報を持つため在宅勤務はなじまないとの意見もあったが、試行実施の結果、十分可能との結論に至った。利用者が少ないため、認知度の向上や制度の柔軟化などの課題に取り組んでいく」との説明があった。
吉田副議長からは、自社が提供するノイズリダクション機能付き音声会議サービスの紹介があった。テレワーク普及の障害の1つである「周囲の雑音」を軽減できるシステムとして、他の登壇者からも期待の声が寄せられた。
最後に田澤氏が「ワーク・ライフ・バランスは人の生き方、つまり社員の生き方。ダイバーシティは社会のあり方、つまり企業のあり方。テレワークはこれらを実現する働き方であり、ぜひ進めていただきたい」と締めくくり、シンポジウムは盛況のうちに終了した。
【産業技術本部、政治・社会本部】