経団連は10月16日、東京・大手町の経団連会館で「働き方改革セミナー」を開催した。家事・育児の男女共同参画に向け、政府施策の理解を深めるとともに、先進的な企業事例の共有を図った。
まず、人口問題委員会企画部会の高尾剛正部会長から開会のあいさつがあった後、基調講演として、厚生労働省雇用均等・児童家庭局の香取照幸局長から、政府における両立支援策について説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。
■ 第二の矢「夢をつむぐ子育て支援」
安倍総理は9月24日に「新三本の矢」を打ち出し、その第二の矢として「夢をつむぐ子育て支援」を掲げた。具体施策の例として多子世帯や一人親家庭への支援、子どもの貧困対策などが示されているため、国民には、福祉色が強いようにみえるかもしれない。
しかし、課題と施策の方向性は、2006~07年の第一次安倍政権の時から変わっていない。例えば、合計特殊出生率1.8という目標については、国民の結婚と子ども数の希望がかなえば実現する数字である。第一次安倍政権では1.75と若干値は異なるが、国民の希望をかなえるという基本スタンスは一貫している。
当時からの最大の課題は、女性が直面している「就労」か「結婚・出産・子育て」という二者択一構造を転換することである。そのためには、働き方改革によるワーク・ライフ・バランスの実現と、保育等の子育て支援の基盤整備という2つの取り組みが必要である。
後者の子育て支援の基盤整備については、多額の追加財源が必要とされたが、社会保障・税一体改革のなかで、従来の年金・医療・介護に加え、子育て支援を社会保障4経費の1つに位置づけ、消費税増税財源を充てることとした。この方針も第一次安倍政権のころから定められていたものである。
■ 男性の育児休業・育児目的休暇の取得促進
出生率向上に向けては多子世帯を増やしていくことが重要であるが、夫の家事・育児時間と、第2子以降の出生割合には相関関係がみられる。したがって、夫の積極的な家事・育児を促していくことが重要な政策課題である。
他方、男性の育児休業取得率は、14年度時点で2.3%と、女性の86.6%と比べると極めて低水準にとどまっている。政府としては、20年度までに、男性の育休取得率を13%にまで引き上げるほか、配偶者の出産後2カ月以内の男性の休暇取得率を80%にしたいと考えている。
この目標達成に向けて、厚生労働省では「イクメンプロジェクト」と題して、男性の仕事と育児の両立を支援している「イクメン企業」や、部下の仕事と育児の両立に配慮しながら業務を進めることができる上司、「イクボス」を表彰している。
さらに、来年度予算においては、「出生時両立支援取組助成金(仮称)」を概算要求した。男性労働者が育児休業を取得しやすい職場風土づくりを行い、実際に休暇を取得させた事業主に対し、一定額の助成金を支給する新たな取り組みである。
今後とも政府としては、さまざまな施策を通じて、機運醸成を図っていく。企業各社には、男性も含めた働き方改革に対して、積極的な取り組みをお願いしたい。
次号では、先進的な企業4社の取り組みを紹介する。
【経済政策本部】