日本経団連タイムス No.3015 (2010年10月7日)
連載記事

解説ISO26000〜社会的責任に関する国際規格<6>

−第6章の概要(下)


解説ISO26000
〜社会的責任に関する国際規格〜
  1. ISO26000入門
  2. 序文、第1章〜第3章の概要
  3. 第4章の概要
  4. 第6章の概要(上)
  5. 第6章の概要(中)
  6. 第6章の概要(下)
  7. 第5章、第7章の概要
  8. 規格の普及促進および今後の課題

今回は、第6章「社会的責任の中核主題」のうち、「6.6公正な事業慣行」、「6.7消費者課題」および「6.8コミュニティー参画および開発」について紹介する。

■ 「6.6公正な事業慣行」

公正な事業慣行とは、組織が他の組織と取り引きを行う場合の倫理的な行動に関係する事項である。例えば、企業と供給業者、請負業者、顧客等との取り引きのほか、企業と政府機関との関係も含まれる。

公正な事業慣行に関連する原則および考慮点として、倫理的な行動基準の遵守、促進および推奨が、すべての公正な事業慣行の基礎を成すことが強調されている。

さらに、関連する5つの課題((1)汚職防止(2)責任ある政治的関与(3)公正な競争(4)バリューチェーンにおける社会的責任の推進(5)財産権の尊重)を挙げ、その後、課題ごとの主要な考慮点と組織に望まれるアクション(合計30)を列挙している。

■ 「6.7消費者課題」

消費者に製品・サービスを提供する企業等の組織は、消費者に対して責任を負う。組織の責任として、(1)教育および正確な情報の提供(2)公正・透明・有用なマーケティング情報および契約プロセスの使用(3)持続可能な消費の促進(4)社会的弱者向けの製品・サービスのデザイン――などを挙げている。

次に、消費者の7つの権利((1)安全の権利(2)知らされる権利(3)選択する権利(4)意見が聞き入れられる権利(5)救済される権利(6)教育を受ける権利(7)健全な生活環境の権利)と4つの追加原則((1)プライバシーの尊重(2)予防的アプローチ(3)男女の平等および女性の社会的地位の向上(4)ユニバーサルデザインの推進)を挙げている。考慮点としては、(1)生活に必須のものが満たされる権利を保証する基本的責任は国にあるが、組織もまたこの権利の実現に貢献できること(2)社会的弱者は、消費者との役割に関して特別の配慮が払われるべきであり、特別に設計された製品やサービスを必要とすることがあり得ること――などが述べられている。

さらに、関連する7つの課題((1)公正なマーケティング、事実に即した偏りのない情報、および公正な契約慣行(2)消費者の安全衛生の保護(3)持続可能な消費(4)消費者に対するサービス、支援、ならびに苦情および紛争の解決(5))消費者データ保護およびプライバシー(6)必要不可欠なサービスへのアクセス(7)教育および意識向上)を列挙しており、その後、課題ごとの主要な考慮点と組織に望まれるアクション(合計約70)を示している。

■ 「6.8コミュニティー参画および開発」

「コミュニティー」とは、組織の所在地に物理的に近接する、または組織が影響を及ぼす地域内にある住居集落、その他の社会的集落のみならず、“virtual community”のような、特定の共通特性を有する人々の集団も含まれると広義にとらえている。

組織がコミュニティーの一員として参画し、コミュニティーの社会的課題の解決とその発展に寄与することの重要性を社会的責任として強調している。

なお、社会貢献活動は、コミュニティー参画および開発に関連する行動の一側面と考えられるが、社会貢献活動だけでは社会的責任を全うすることにはならないとも述べており、他の中核主題に挙げられている課題にも取り組むよう示唆している。

次に、コミュニティー参画および開発に関連する原則として、(1)組織は、自らがコミュニティーの一員と考えること(2)コミュニティー構成員の意思決定や選択を尊重すること(3)コミュニティーの特質(文化、宗教、伝統、歴史など)を尊重すること――などを挙げている。考慮点としては、(1)国連ミレニアム宣言、環境と開発に関するリオ宣言などの公的宣言(2)関連する公共政策の支援(3)幅広いステークホルダーと関与する機会の模索――などを挙げている。

さらに、関連する7つの課題((1)コミュニティー参画(2)教育および文化(3)雇用創出および技能開発(4)技術開発および最新技術の導入(5)富および所得の創出(6)健康(7)社会的投資)を列挙しており、その後、課題ごとの主要な考慮点と組織に望まれるアクション(合計約50)を示している。

【政治社会本部】
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