解説ISO26000 〜社会的責任に関する国際規格〜 |
ISO26000は、すべての組織を対象とする社会的責任(SR)に関する世界初の国際規格である。国際標準化機構(ISO)では、2004年にストックホルムで開催されたSRに関する国際会議において規格化を決議して以来、作業部会を設け、同規格の策定作業を進めてきた。今年5月にコペンハーゲンで開催された作業部会総会での議論を踏まえ作成された最終草案が9月に国際投票に付され、年内にはISO26000が発行される見込みである。本シリーズでは、ISO26000の概要、各章のポイント、普及促進と今後の課題等について、8回にわたり解説する。
規格の主な特徴としては、次の3点が挙げられる。
第一に、企業のみならずすべての種類の組織を対象にしていることである。もともとは、CSR(企業の社会的責任)規格として検討されていたが、04年の、「社会的責任を果たすべきなのは企業だけではない」とするISOの高等諮問委員会(SAG)の勧告に基づき、より普遍的なSR規格として開発することになった。
第二に、認証を目的とした品質管理に関するISO9000や環境マネジメントに関するISO14000と異なり、同規格はガイダンス文書(手引書)として活用するためにつくられていることである。要求事項を挙げて適合性評価を行うというものではなく、組織は、規格の内容を参考に自主的にSRに取り組むことになる。
第三に、政府、企業、労働、消費者、NGO、その他有識者という6つのカテゴリーから代表が参加し、対等の立場で議論して策定されたことである(マルチステークホルダー・プロセス)。策定作業には、99カ国、42国際機関から、450名以上のエキスパートが参加している。このようなプロセスによる規格策定は、ISOでは初めてであり、かつ参加者もISO史上最大となった。それゆえ、交渉過程で、ステークホルダー間や途上国と先進国間の利害・意見調整が難航し、通常の規格策定の2倍に当たる6年の歳月を要した。
適用範囲としては、主に次のように述べられている。
図表に規格の構成を示している。序文から第4章は根本の部分であり、本規格はどのようなもので、どのような使い方をするのが良いか等が述べられている。
第6章は、アクションの部分であり、SRに関する7つの中核主題を挙げ、各主題の下にさまざまな課題を網羅的に列挙している。組織は、7つの中核主題に挙げられている諸課題に満遍なく目を通し、そのなかから、組織の特性や置かれた状況に照らして、重要かつ緊急性のある課題を特定し、順次取り組むことが奨励されている。
第5章と第7章では、組織がSRを実践する方法について述べられている。ここでは、ステークホルダー・エンゲージメント(さまざまなステークホルダーの意見を把握し、自らの決定、行動に反映させること)の重要性が強調されている。
附属書Aには、国際機関や民間団体のSRに関するプログラム、ガイドライン等が列挙されている。
序文 | |
第1章 | 適用範囲 |
第2章 | 用語及び定義 |
第3章 | 社会的責任の理解 |
第4章 | 社会的責任の原則:説明責任、透明性、倫理的な行動、ステークホルダー の利害の尊重、法の支配の尊重、国際行動規範の尊重、人権の尊重 |
第5章 | 社会的責任の認識及びステークホルダー・エンゲージメント |
第6章 | 社会的責任に関する中核主題:組織統治、人権、労働慣行、環境、公正な 事業慣行、消費者課題、コミュニティ参画及び開発 |
第7章 | 組織全体への社会的責任の統合 |
附属書A | 社会的責任に関する自主的なイニシアチブ及びツールの例 |
附属書B | 略語 |
参考文献 | 関連するISOの規格や政府間の合意文書 |