解説ISO26000 〜社会的責任に関する国際規格〜 |
前回は、第6章「社会的責任の中核主題」の全体的な構成(「6.1一般」)および7つの中核主題に関する記述の枠組みについて、「6.5環境」を例に説明した。今回と次回にかけて、他の中核主題について解説する。今回は、「6.2組織統治」、「6.3人権」および「6.4労働慣行」を取り上げる。
まず組織統治の概要(組織と組織統治、組織統治と社会的責任)が述べられている。ここでは、「組織統治」は7つの中核主題の一つであると同時に、組織が他の中核主題に取り組む際の基礎部分であるという、組織統治の特殊な性格が強調されている。
次に、組織統治に関連する原則および考慮点として、(1)効果的な組織統治は、社会的責任の7つの原則に基づいたものであること(2)リーダーシップは効果的な組織統治に不可欠であること(3)デューディリジェンス(適切な注意)は、組織が社会的責任に対処するうえで重要であること――などを挙げている。
さらに、関連する課題として、「社会的責任の原則および慣行の適用を可能にするような意思決定のプロセスおよび構造」を挙げ、その後、組織に望まれる12のアクション((1)社会的責任へのコミットメントを表明する戦略、目的および目標の策定(2)リーダーシップの関与および説明責任の表明(3)組織の社会的責任に関する活動への、あらゆるレベルの従業員の効果的な参加の奨励――など)を列挙している。
まず人権の概要(組織と人権、人権と社会的責任)が述べられている。ここでは、(1)人権とは、人であるがゆえにすべての人に与えられた基本的権利であること(2)人権には大きく分けて2種類(市民的および政治的権利、経済的・社会的および文化的権利)あること(3)組織は、その影響力の範囲も含めて人権を尊重する責任を負うこと――などが述べられている。
次に、人権に関する5つの原則((1)すべての人に属する固有の権利である(2)奪うことができない絶対的な権利である(3)すべての人に適用される普遍的な権利である(4)選択的に無視することができない不可分な権利である(5)一つの人権を実現することが他の人権の実現に貢献するという点で、相互依存的な権利である)を挙げている。考慮点としては、(1)組織にはすべての人権を尊重する責任があること(2)組織が人権尊重の責任を果たすためには、デューディリジェンスが必要であること(3)組織は人権についての意識を高めるために、人権教育の促進を検討すべきであること――などを挙げている。
さらに、関連する5つの課題((1)デューディリジェンス(2)人権に関する危機的状況(3)共謀の回避(4)苦情解決(5)差別および社会的弱者)を列挙しており、その後、課題ごとの主要な考慮点と組織に望まれるアクション(合計約40)を列挙している。
まず、労働慣行の概要(組織と労働慣行、労働慣行と社会的責任)が述べられている。ここでは、次のような点に言及している。
次に、労働慣行に関連する原則として、(1)労働者を生産の要素としたり、商品と同様の市場原理を適用したりしないこと(2)労働者の脆弱性や基本的権利を保護する必要があること――などを挙げている。考慮点としては、(1)労働者のために公正かつ公平な処遇を実施する責任は政府にあること(2)政府が法を制定できていない場合、組織は国際的法律文書(世界人権宣言、ILOの労働基準など)の基礎となっている原則を遵守すること――を挙げている。
さらに、関連する5つの課題((1)雇用および雇用関係(2)労働条件および社会的保護(3)社会対話(4)労働における安全衛生(5)職場における人材育成および訓練)を列挙しており、その後、課題ごとの主要な考慮点と組織に望まれるアクション(合計約45)を示している。