日本経団連(奥田碩会長)は11日、政治寄付を行う際の参考となる政党の「2005年政策評価」を発表し、会員企業・団体に送付するとともに、自由民主党と民主党に説明を行った。05年政策評価は、第2次政策評価を発表した04年9月から今年9月の総選挙の時点までを評価期間としたもの。記者会見で説明にあたった宮原賢次副会長(政治・企業委員長)は、会員企業に対し、企業の社会的責任の一端としての重要な社会的貢献として、同政策評価を参考に自発的に政治寄付を行うよう呼びかけた。また、政党に対しても、(1)民間寄付を政策立案・推進能力の強化に充当すること (2)政治資金の効率化と透明性の向上に努め、民間寄付の使途を公表すること――をあらためて要望した。
記者会見で宮原副会長はまず、評価表の構成と示し方について説明し、昨年11月に策定した10項目の優先政策事項に照らして、「合致度」「取組み」「実績」の3つの観点について5段階で評価したと述べた。特に「実績」の評価に関しては、立案から実現に至る過程で政党が主体的に関与した政策を評価対象としているとして、それに該当する政策がない場合ならびに実現した政策が優先政策事項の一部に止まる場合には「−(横棒)」にしたと説明した。この結果、民主党の場合には、全項目において実績が「−(横棒)」となり、自民党においても「外交・安全保障」の「実績」は「−(横棒)」となった。
前年評価の低かった自民党の社会保障改革について、「介護保険の給付抑制や公的年金控除等の縮減等により、給付と負担のバランス改善を進めた」ことや「一体的制度改革に向けた党内の組織再編」を評価し「取組み」はBとなった。しかし、「実績」は、厚生年金保険料率の引き上げに対する方針が変わっておらず、抜本改革にも至っていないことから、「C」評価に止まった。
また、郵政民営化を含む規制改革に関する自民党の評価は、前年と同様の「B」で、総選挙で勝利し郵政民営化に大きく近づけたとした。一方、民主党に対しては、郵政民営化について国会審議で明確な対案を示さないまま反対したとして、「合致度」「取組み」とも評価を下げた。
最後に宮原副会長は、昨年新規に政治寄付を実施した会員企業が100社を超えたこと等を紹介し、政策評価による企業の政治寄付の広まりを強調するとともに、「今後も政策評価の浸透に努めていく」との考えを示した。
日本経団連は、政策本位の政治の実現や議会制民主主義の健全な発展、政治資金の透明性向上の観点から、企業・団体による政党の政治資金団体への寄付を企業の社会的責任の一端としての社会貢献と位置づけ、促進している。
この一環として一昨年に、政党を評価する基準となる「優先政策事項」(2003年9月25日号既報)を発表。その後、会員企業が政党の政策評価を参考に、自発的に政治寄付をすることを申し合わせた。また、昨年はそれを受けて1月と9月に、会員企業・団体が政治寄付を行う際の参考として「2004年第1次政策評価」(04年2月5日号既報)、「2004年第2次政策評価」(04年9月30日号既報)を発表した。
今回3回目となる「2005年政策評価」のポイントは次のとおり。
2004年第2次政策評価発表後(2004年9月)、2005年総選挙時点までとした。
現時点で企業の政治寄付を受け入れる意思を明らかにしている自由民主党と民主党の2党とした。新党については、実質的な活動期間が極めて限定的であることから、今回は評価を避けた。
「総評」、「優先政策事項に照らした評価」、「包括的事項の論評」の3部構成とした。
(1)「総評」では評価結果の要約を記述した。
(2)「優先政策事項に照らした評価」は、「合致度」「取組み」「実績」の観点からそれぞれ5段階に評価した。
(3)「包括的事項の論評」は、政策本位の政治への取組み、企業の政治寄付への考え方、政治資金の透明性向上に向けた取組みなどについて、経団連の考えに照らし、記述した。
政党に対しては、改めて、(1)民間寄付を政策立案・推進能力の強化に充当すること (2)政治資金の効率化と透明性の向上に努め民間寄付の使途を公表することを強く要望する。