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魅力ある日本

第2部 我々が目指す日本の未来
【各論:望ましい姿ならびに改革すべき課題と提言】

第5章
企業は市民社会づくりの中心的な役割を担う


《望ましい企業の姿》


  1. 企業は、社会性、人間性を尊重し、消費者・ユーザーのニーズに応じた商品・サービスを提供することにより、生活利便の向上と新しい価値の創造を図り、物心両面の豊かさや幸福の追求に貢献している。

  2. 大競争時代にあって、企業は市民、市場から厳しく選別されるが、この挑戦に対し、個性的な人材、技術・ノウハウ、ならびに社会の信頼・信用などを蓄積・活用し、革新と変化を創造するとともに、従業員、株主、地域住民、社会、自然等との共生を図ることによて応えている。また、新しい時代に合ったライフスタイルや経済システム、ならびにその実現のための政策や制度づくりを企業自ら提案している。

《望ましい姿を実現するための課題と提言》

  1. 自己責任原則に則り、企業倫理を遵守しつつ、公正かつ自由な競争を展開する。〔企業倫理〕
  2. 自己責任原則に則り、自助・自治意識に基づいて公正かつ自由な競争を展開する。その際、法律のみならず社会的規範を遵守するなど、企業倫理の徹底を図る。また、官とのもたれ合いや行政への依存意識を排除し、良識と緊張のある、透明度の高い官民の関係を構築する。社会が真に必要とする情報の適時適切なディスクロージャーならびに積極的な広報・広聴活動などに努める。

  3. イノベーションを通じ消費者・ユーザーの満足度・感動を高める。〔消費者・ユーザー〕
  4. 激しい環境変化と厳しい競争の中で、消費者・ユーザーとともに成長する経営姿勢、経営努力により、変化の潮流を先取りするとともに、消費者・ユーザーの要求に応える商品・サービスを開発し、提供する。そのため、市場と接触している現場当事者への実質的な権限委譲、分社、社内ベンチャー等を積極的に推進する。
    また、企業内、関連企業とのネットワークを形成し、個性的な強みのある技術・ノウハウと将来ビジョンを基に、内外の企業とコスト分担、技術優位、顧客確保を狙う、相互補完的な戦略的提携を図るとともに、研究開発、ソフトウェア開発等を強化拡充する。

  5. あらゆる市民(従業員、株主、地域住民等)の支持が得られる活動を展開する。
    1. 個が光る、やる気の出る職場づくりを進める。〔従業員〕
    2. 就業機会確保の重視、情報共有の仕組みならびに現場の知恵・創意工夫の活用の良さも維持していくとともに、力のある人が思う存分、その能力を発揮できる風土づくりに努める。また、従業員の主体的キャリア形成を重視する。高齢者、女性、障害者の知恵、経験、能力と意欲を活用した多様で柔軟な雇用形態を用意する。長期休暇を毎年取得できるような機会も設ける。

    3. 株主を尊重し、株式の魅力向上を図る経営を確立する。〔株主〕
    4. ROE(株主資本利益率)を企業経営の健全性の重要な指標と位置づける。また、株主、投資家との情報交換を積極的に行い、企業の経営理念、経営方針、企業の果たしている役割、社会との関わり、収益状況、配当政策などについて、積極的に広報するとともに、公正かつタイムリーなディスクロージャーに努める。株主総会についても、双方向の意志疎通を緊密に行うものと位置づけて適切な運営を図る。さらに、業績に応じた柔軟な配当政策を推進する。

    5. 事業活動ならびに経営資源の活用を通じて地域社会の発展に貢献する。〔地域社会〕
    6. 本来の事業活動を通じて地域の発展に貢献するとともに、社会貢献活動を、自発性に富んだ、豊かな市民社会の形成に参画する手がかりとして位置づけ、コスト意識、効率的な業務遂行能力、組織運営ノウハウ、人材、資金力、技術力、各種施設を活かして、社会福祉、医学・健康、環境保全、教育、学術、芸術・文化、史跡保存、被災地支援、地域社会イベント、スポーツ、国際理解・国際交流等の面で、地域や社会のニーズに継続的に対応する。

    7. 循環型経済社会の構築に貢献する。〔地域環境、地球環境〕
    8. 経団連「地球環境憲章」(1991年4月23日)の精神に沿って、地域の環境や地球環境への負荷の軽減に努め、自然循環の維持ならびに資源のリサイクルが円滑に行われる循環型経済社会の構築に貢献する。そのため、設計、原材料調達、生産、流通、販売、開発、事務などすべての企業活動の面で、環境への負荷やリサイクルに配慮していく。また、ISO(国際標準化機構)の定める基準に沿った環境管理・監査を実施するのみならず、ISOにおける国際標準作りに積極的に参画する。

    9. 国際的な事業展開に際しては、現地社会から信頼される企業市民として、現地の経済発展や生活の向上に貢献していく。〔国際社会〕
    10. 海外においても、現地の文化や慣習に充分配慮した事業活動を行い、従業員、地域市民の共感を得て、現地社会に役立つ存在となる。経営の現地化を推進し、現地調達の拡充に努めるとともに、現地が研究開発、設計、製造、販売、人事等に関する権限をもつ。現地社会からの人材の登用を推進するとともに、国内と同様、よき企業市民としての責任を果たす。


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