
あいさつする十倉会長
経団連は1月30日、大阪市内で「関西会員懇談会」を開催した。十倉雅和会長、冨田哲郎審議員会議長、副会長、関西地区の会員ら約370人が参加。「公正・公平で持続可能な社会を目指して」を基本テーマに意見交換した。
開会に当たり十倉会長は、2024年12月に取りまとめた、日本の未来社会の姿を描く「FUTURE DESIGN 2040」(FD2040)を紹介。わが国が避けては通れないパスウェイである「科学技術立国」と「貿易・投資立国」の基盤となるのは公正・公平で持続可能な社会であり、その実現には「成長と分配の好循環」が欠かせないと述べた。
■ 関西経済の活性化に向けて
「関西経済の活性化に向けて」をテーマとする懇談では、西日本旅客鉄道の長谷川一明社長から、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)を契機とした中長期的な関西経済活性化について、鴻池運輸の鴻池忠彦会長兼社長から、グローバル人材育成による関西経済の活性化について、それぞれ発言があった。
これに対して、経団連から、
- (1)地域の多様なステークホルダーが主体的に地域課題に取り組むことを推進すべきであり、とりわけ、広域的な連携が肝要である。また、大阪・関西万博を契機に、全国各地に観光客を呼び込むことが重要である(永井浩二副会長)
- (2)観光産業における人手不足は重要な課題である。観光デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進により、受付やバックヤードでの作業等の省力化・効率化を進めて生産性向上を図っていくことが重要である(髙島誠副会長)
- (3)カーボンニュートラル(CN)の実現に向けては、再生可能エネルギーの最大限の導入や原子力の積極的な活用とともに、グリーントランスフォーメーション(GX)製品・サービスが需要される市場の創出が求められる(筒井義信副会長)
- (4)平時の利便性と災害などの有事の強靭性を両立する「フェーズフリー」なインフラ整備の推進、大規模災害の発生を念頭に置いた実効性のある事業継続計画(BCP)の構築や国民の防災意識の醸成などを行うべき(永野毅副会長)
――との発言があった。
■ 産業競争力強化に向けて
「産業競争力強化に向けて」をテーマとする懇談では、参天製薬の黒川明会長から、産業競争力強化に向けたグローバル視点とイノベーションの推進について、TOYO TIREの清水隆史社長&CEOから、業界横断的な産業戦略の共創について、それぞれ発言があった。
これに対して、経団連から、
- (1)DXは、効率性を高めるだけではなく、新しい価値をつくり出すもの。このDXの基盤となるのが、異なる国・業種・組織の間で、信頼性のある多種多様なデータを円滑に連携する「産業データスペース」であり、その構築が求められる(澤田純副会長)
- (2)イノベーション推進に向けた企業の役割は、「キーテクノロジーや関連人材への継続的な投資」「ディープテック分野におけるイノベーションの社会実装等の牽引」「国際標準化などのルール形成への積極的な取り組み」の大きく3点である(津賀一宏副会長)
- (3)「2025年版経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)」では、春季労使交渉の経営側の基本スタンスとして、賃金引き上げのモメンタムを定着させ、「分厚い中間層」の形成と「構造的な賃金引き上げ」の実現に貢献することが経団連・企業の社会的な責務と明記した(小路明善副会長)
――との発言があった。
また、住友電気工業の松本正義会長(関西経済連合会会長)は、大阪・関西万博の機運醸成やチケット購入拡大を要請するとともに、万博のレガシーについて議論していく旨を述べた。また、関西財界訪中団の派遣やイノベーションの取り組みについても説明があった。
閉会に当たり冨田審議員会議長は、大阪・関西万博の成功に向け、経団連として全力を尽くしていくと述べた。また、現在日本は、人口減少や格差の拡大など、複雑に絡み合った難問を抱えており、産業界と官、自治体、学が力を合わせて英知と熱意を結集して、主体的に解決していかなければならないと締めくくった。
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大阪大学を視察
懇談会に先立ち、一行は大阪大学吹田キャンパスを訪問。感染症総合教育研究拠点やレーザー科学研究所などを視察するとともに、西尾章治郎総長から、同大学の将来構想や産学共創に関する取り組みについて説明を聴いた。
【関西事務所・総務本部】