経団連の環境委員会(小堀秀毅委員長、野田由美子委員長、宮田知秀委員長)は2023年11月、サーキュラーエコノミー(CE)に関する欧州ミッションをベルギー、オランダに派遣した(24年1月1日号既報)。その際、オランダ社会基盤・水管理省のビビアネ・ハイネン環境大臣(当時)と会談し、今後もCEに関する両国の知見を共有していくことを確認した。
こうしたなか、今般、社会基盤・水管理省のオディリア・クナップ国際局次長を団長とし、建築分野のCEに取り組む視察団が来日した。欧州諸国のなかでもCE先進国とされるオランダは、「50年までに完全なCEを実現する」との野心的な目標を掲げるとともに、重点取り組み分野の一つとして「建築分野」を指定している。この機会を捉え11月11日、東京・大手町の経団連会館で同視察団との意見交換会を開催した。野田副会長・環境委員長および32の企業・団体から49人が参加した。概要は次のとおり。
■ オランダ社会基盤・水管理省
建築分野におけるCEの実現は、建設に関わる廃棄物発生、温室効果ガス排出、エネルギー消費等による環境負荷の低減に貢献する重要テーマである。また、その実現は素材や材料だけでなく、建築工事・施工の手法の変革や都市計画の革新、ひいては私たちの生活様式そのものを変える可能性を持つ。
オランダは、循環型経済と社会の実現に向けた政策形成の先頭に立つとともに、公共調達を通じて建築業界に「挑戦」を求めている。政府は、業界が直面する課題を理解する必要があり、地方自治体や産業界等との密接な連携と対話を行っている。この結果、素晴らしいイノベーションを生み出した事例もある。
オランダはいまだ「直線型経済」からの移行過程にあるが、今後、国内にとどまらず世界中の産業界と協力して、CEの実現を図っていく。
■ アーネム・ナイメーヘン緑の都市地域連合(自治体連合)
2年以上前から地域の循環性に関する新しいプログラムを開始し、すでに50件の「未来型建設」プロジェクトを通じて約5000戸の住宅を建設している。最も重視しているのは1次原材料の使用量の削減であり、建設会社に対し2次材料やバイオベースの材料の利用を促している。私たちはマダスター社とも協力し、引き続き建設分野の循環性・循環率の向上に取り組んでいく。
■ マダスター社
CEへの移行には、製品や素材に関する適切なデータの記録・管理と透明性の確保が必要であるとの考えのもと、「マテリアル・パスポート」システムを開発した。
このオンラインシステムでは、各建物やインフラに利用されている建築資材等のデータに基づいた登録簿が作成される。それらのデータを利用することで、再利用可能性や環境負荷・循環性に関する情報の表示、また再利用した場合に得られる経済的利益が算出可能になる。これにより、建築資材の循環利用の実現に向け、現実的で具体的な解決策を考えていくことができる。日オランダが協力し、建築分野に新たな未来を開きたい。
■ 意見交換
環境価値(循環性、脱炭素への貢献等)に関する情報開示のあり方や情報の管理・提供の方法、バリューチェーン上の企業間協力や官民連携から生まれるイノベーションの重要性などについて、活発に意見交換を行った。
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経団連は環境委員会を中心に、CEの促進に向けた活動を引き続き展開していく。
【環境エネルギー本部】