経団連は、2023年2月に「サーキュラー・エコノミーの実現に向けた提言」を取りまとめた。同提言では、サーキュラーエコノミー(CE)を経済成長や産業競争力強化につなげることを重要課題の一つと位置付けるとともに、その実現に向けた方策を提案した。その後、政府の「成長志向型の資源自律経済戦略」や「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太の方針2023)にCEの推進が盛り込まれ、CEはわが国の成長戦略として位置付けられた。
こうしたなか、野田由美子副会長・環境委員長を団長とし、23社35人から成る「サーキュラーエコノミーに関する欧州ミッション」を11月27~30日の日程で、ベルギー、オランダに派遣した。概要は次のとおり。
■ 目的と方向性
同ミッションは、「EUの最新のCE政策動向を理解する」「CE先進国オランダに学ぶ」の2点を目的として、欧州委員会、オランダ政府ならびにアムステルダム市、ビジネスモデルの変革に取り組んだ大企業、スタートアップ企業と面会、意見交換を行った。
■ ベルギー
ベルギーでは、欧州委員会を訪問し、ビルギニユス・シンケビチュウス欧州委員(環境・海事・漁業担当)、マイブ・ルート成長総局(DG GROW)次長、シオバヌ・ドルディア環境総局(DG ENV)サーキュラーエコノミー担当局長と意見交換した。
シンケビチュウス氏は、CE政策の最新トピックについて説明。CEは将来に向けた重要課題であり、EU・日本間の主要な議題に据えていきたいとの意向が示された。また、ルート氏は、エコデザインにかかる制度的枠組みや研究開発・技術開発への投資の重要性について指摘。ドルディア氏は、CE実現のために、エコデザイン規制や再生プラスチック材の供給量拡大に向けた施策の必要性に言及した。
■ オランダ
オランダでは、国および先進自治体との意見交換に加え、ビジネスモデルの変革に取り組む大企業・スタートアップ企業を訪問し、交流を深めた。
ビビアネ・ハイネン環境大臣は、50年までに完全なCEの実現を目指し、企業や国民から循環型の製品が選択されるよう、国として経済的・物理的・社会的環境を整えると言及した。アムステルダム市のソフヤン・ムバラキ副市長からは、「ドーナツ経済」の考え方のもと、CEへの移行に向け試行錯誤を重ねているとの説明があった。ヤン・ペーター・バルケネンデ前首相からは、ビジネスを通じた企業の社会的価値の創出、イノベーションの重要性について指摘があった。
また、ユニリーバ、DSM(Dutch State Mines)と面会し、CE時代を見据えてビジネスモデル変革に取り組んだ経験等について説明を聴くとともに意見交換した。両社からは、野心的な目標設定の重要性や、事業転換に向けたビジョン、勇気、先見性の重要性が示された。
オランダ企業にCE型のビジネスモデル転換への助言を行っている建築家のトーマス・ラウ氏からは、(1)ビジネスモデルを(モノ提供型ではなく)機能提供型に転換すべき(2)資源循環を含めたバリューチェーン構築が必要――との考えが示された。
また、CE分野のスタートアップ企業4社との交流会を開催して連携の機会を探るとともに、CEのインキュベーション施設(Blue City)、実験区(De Ceuvel)、CEビジネスの実践現場(De Hallen)を視察した。
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環境委員会は、同ミッションの成果を日本の政策当局や企業の経営層などに広く発信していく。
【環境エネルギー本部】