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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年1月1日 No.3619 十倉会長が「Gゼロサミット2023」であいさつ

十倉会長(提供:Eurasia Group)

経団連の十倉雅和会長は、12月5日に都内で開催されたユーラシア・グループ主催「Gゼロサミット2023」で、同社のイアン・ブレマー社長らと共同議長を務め、開会あいさつをした。十倉会長の発言要旨は次のとおり。

23年に入り、コロナ禍は終息したものの、大国間の対立は継続し、ロシアによるウクライナ侵略は2年がたとうとしている。さらにイスラエルとハマスの間で大規模な戦闘が生じるなど、世界の分断が懸念される状況である。

こうしたなかにあっても、グローバリゼーションや相互依存を否定してリショアリング(注)等を進めるのではなく、特定の国に過度に依存している状況を踏まえてサプライチェーンの多様化を進める「リ・グローバリゼーション」を目指すべきである。そのカギとなるのは信頼である。ある国が信頼できるかどうかは、政治体制ではなく、国際的なルールを守っているかという行動によって判断すべきである。この信頼を通じて、世界の分断に歯止めをかけなければならない。

通商面では、自由貿易を今後も追求していくべきである。一方、地政学的な対立が厳しさを増すなかにあって、すべての国を同列に扱うことが困難になっている。そこで、貿易・投資等について、(1)高いレベルでの自由化にコミットする(2)信頼できる国や地域との間では、内外無差別の原則を適用する――ことによって、自由貿易を維持すべきである。経団連が4月に主催したB7サミットでは、この考えを「自由で公正な貿易投資クラブ」という形で打ち出した。これは、信頼を強靭なサプライチェーンを構築するための不可欠な要素としているG7広島サミットの首脳宣言と相通じている。

また、経済安全保障に関する規制については「スモールヤード・ハイフェンス」(限定された分野を厳重に管理)を原則とし、経済活動や自由貿易へのマイナスの影響を最小限にとどめることが重要である。

デジタル面では、コロナ禍で越境データの流通量が増えた一方、安全保障等を理由とした規制も増えている。そうしたなか、日本が推進してきた「信頼性のある自由なデータ流通」(DFFT)の実現に期待する。越境データ流通の自由化に前向きであった米国の姿勢に変化がみられることを心配している。

カーボンニュートラル(CN)の実現に向けても信頼が重要となる。環境に優しい製品を普及させるとともに、省エネ技術や革新的技術への投資を拡大する必要がある。各国の政策の違いがもたらす国際的な緊張を放置すれば、不確実性が高まり、低炭素化に向けた投資が抑制されかねない。各国の政策の公正さを比較・検証するルールを策定・共有し、相互に信頼を得ることによって、そのような事態を回避する必要がある。

◇◇◇

同サミットでは、十倉会長のあいさつに続き、岸田文雄内閣総理大臣、ラーム・エマニュエル駐日米国大使が基調講演を行った。その後、国内外から産学官の有識者が出席し、国際社会における日本の役割やテクノロジー、気候変動、経済安全保障等をテーマに熱のこもった議論が行われた。

(注)主に製造業などにおいて、海外に移した生産拠点を再び自国へ移転すること

【国際経済本部】

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