経団連のダイバーシティ推進委員会(魚谷雅彦委員長、柄澤康喜委員長、次原悦子委員長)は1月17日、東京・大手町の経団連会館で加藤鮎子女性活躍担当大臣・内閣府特命担当大臣(男女共同参画)との懇談会を開催した。経団連からは、同委員会の3委員長のほか、永井浩二副会長、出雲充審議員会副議長、稲垣精二審議員会副議長ら約100人が出席した。企業における女性活躍の現状や課題などについて幅広く意見交換した。概要は次のとおり。
冒頭、魚谷委員長は、2023年は、プライム市場上場企業を対象とした女性役員比率目標の設定、LGBTQに係る法律の成立・公布等、ダイバーシティ政策においてエポックメーキングな年になったと述べた。一方、世界経済フォーラム(WEF)が公表したジェンダーギャップ指数の国別順位は22年よりランクダウンしており、さらなる危機感の共有が必要とした。そのうえで、経済界として、(1)アンコンシャスバイアスの解消(2)女性と健康に関する啓発の推進(3)タレントパイプラインの充実(4)男性の育休取得等の推進――に注力すると表明。政府に対しては、(1)年収の壁など女性活躍の障害となる社会制度の改革(2)性的指向やジェンダーアイデンティティに関する理解を深める施策の展開(3)選択的夫婦別姓の実現――を提言した。
続いてあいさつした加藤大臣は、女性活躍を推進し、女性の経済的自立を実現するためには、女性のキャリア形成やライフスタイルの選択に及ぼす影響が中立的な制度・慣行を構築する必要があると述べた。また、「女性版骨太の方針2023」を踏まえた東京証券取引所の上場規程の改正により、プライム市場上場企業は30年までに女性役員比率を30%以上とすることを目指すこととなったことから、政府としてはその中間目標として東証プライム市場の女性役員比率を25年に19%とすることを目指し(1月25日号既報)、企業の目標の実現に向けた取り組みの後押し、取り組み状況のフォローアップを進めると強調した。
さらに加藤大臣は、「男女共同参画の現状と企業における女性登用の加速化に向けて」と題し講演した。23年末に設定した女性役員比率目標についてあらためて説明したほか、仕事と家庭の両立支援策の一層の充実、女性のさらなる所得向上に向けた環境作りに取り組むとした。また、科学技術・学術分野における女性活躍推進の課題や理工チャレンジの取り組みを紹介。女性活躍と経済成長の好循環を実現していくことが重要であり、企業における女性登用の加速に向けたさらなる取り組み等を求めた。
その後、柄澤委員長、次原委員長、出雲副議長が、政治分野における女性活躍推進に向けたジェンダー・クオータ制の法制化、女性と健康に関する課題と女性が働き続ける環境整備への支援、スタートアップにおける企業内保育所に関する規制緩和等についてそれぞれ発言し、加藤大臣と意見交換した。
懇談を通じて、女性の活躍推進は政府と経済界における共通の課題であること、今後も産官連携のうえ、女性のさらなる活躍に向けた施策を進めていくことを確認した。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】