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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年7月4日 No.3137 第102回ILO総会 -各議題の概要

第102回ILO(国際労働機関)総会が6月5日から20日まで開催され(前号既報)、同総会で討議された三つの技術議題については、使用者側の考え方が概ね反映された結論となった。各議題の結論は次のとおり。

■ 「新たな人口動態変化における雇用と社会的保護」

この議題では、世界各国で進む高齢化が及ぼす雇用や労働政策への影響とその対応について討議した。

結論文書には、主に次の五つの視点が盛り込まれた。

第一に、高齢化に伴う課題への政策対応に際して、各国における高齢化の進展度合いや、制度上や法的・文化的な相違などを十分に考慮しつつ、総合的かつ効果的な対応が必要である。特に、(1)継続的な職業訓練施策(2)年齢差別・性差別への対応(3)基本的人権としての社会保障・医療保障・介護保障の供給――等の施策が重要としている。

第二に、雇用政策と社会保護政策とは相互補完関係にあり、高齢者の就業機会の増加に向け、雇用の特性や多様性に応えるよう求めている

第三に、労働市場政策は、労働者には安定と安全性を提供するとともに、雇用主にも競争力や革新性の維持に必要な柔軟性を確保できる枠組みであると指摘している。

第四に、社会保障施策では、労働者の退職後の生活の安定に向け、年金制度の安定的な財政の確保に向けた取り組みが必要であるとしている。

第五に、介護労働者のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい労働)の促進に向け調査を実施することとし、今後1年以内にILO理事会で調査項目を決定することとなった。

「新たな人口動態変化における雇用と社会的保護」を討議する委員会(写真提供:ILO)

■ 「持続可能な開発、ディーセント・ワーク、グリーン・ジョブ」

この議題では、環境面の持続可能性の確保とディーセント・ワークの同時実現に向け、質の高い雇用の創出や社会的保護の提供のあり方などを討議した。

結論文書には、(1)持続可能な開発を進めるにあたり、画一的な施策はあり得ず、各国ごとに、各経済セクターや企業の状況等を踏まえた適切な施策が必要であること(2)省エネ推進のための法制を整備し、これを着実に実施することで、長期的な経済発展や雇用の創出と環境保護を両立していくべきこと(3)各国政府がグリーン・ジョブを推進するにあたり、労働者の権利を守るとともに、中小企業を支援すべきこと(4)ILOは各国の実情を踏まえた政策判断を奨励すべく、当該分野に関するデータ収集を行うべきこと――などが盛り込まれた。

なお、日本の使用者代表は、排出量取引制度や固定価格買取制度等の個別具体的な論点は、他の国際機関の取り組みとの重複を避ける観点から結論文書に盛り込むべきでないと主張。その結果、これらの論点は、結論文書には盛り込まれなかった。

■ 「社会対話の戦略的目標に関する周期的議論」

この議題は、2008年総会で採択された「公正なグローバル化のための社会正義に関するILO宣言」に基づいて行われたもので、今回は「社会対話」について議論した(注)

討議において、使用者側は、集団的労使交渉以外のさまざまな手法を用いて社会対話に対応していくべきと主張したのに対し、労働側は、団結権・団体交渉権の確保がないなかでの社会対話はあり得ないことを主張。結論文書では関連するILO条約に規定する「結社の自由」と「団体交渉権の原則」を尊重し、社会対話と三者構成主義を推進することが確認された。また、ILOは政策アドバイス、経験交流、技術協力活動を通じて政労使三者間の社会対話と政策決定メカニズムを促進すべきとされた。特に経済的危機や制度移行に対応する際、三者による社会対話の重要性について調査研究を深めるべきことが盛り込まれた。

(注)同宣言では、ディーセント・ワークの実現に向け、「雇用」「社会的保護」「労働における基本的原則及び権利」「社会対話」の四つの戦略目標を追求するため、ILO総会で毎年いずれかのテーマを取り上げ、議論を深めることを定めている

【国際協力本部】

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