ILO(国際労働機関)の第102回総会が6月5日から20日まで、スイス・ジュネーブのILO本部で開催され、各国から156名の雇用労働担当閣僚を含む4700名を超える参加があった。
経団連は、谷川和生雇用委員会国際労働部会長を代表とする日本使用者代表団を派遣。「新たな人口動態変化における雇用と社会的保護」「持続可能な開発、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、グリーン・ジョブ」「社会対話の戦略的目標に関する周期的議論」に関する討議が行われ、成果文書が採択された。
さらに強制労働条約違反であるとしてミャンマーに課していた制裁措置について、恒久的に撤廃する歴史的決定をした。
■ ガイ・ライダー事務局長あいさつ
昨年10月に事務局長に就任したガイ・ライダー氏は、5日の開会式で事務局長として総会で初めて演説。「人口動態および科学技術の急速な変化、不平等の拡大、貧困・景気回復の遅れにより、仕事の世界はかつてないほど急速かつ奥深い変化の真っただ中にある。これはすべての人にディーセント・ワークをという目標に大きな課題を提供する」と語った。
また、同氏は20日の閉会式で、「加盟国構成員のさまざまな意見に虚心坦懐に耳を傾け、今後もILOが意義のある組織であり続けられるよう改革を進めていく」と約束した。
■ 谷川日本使用者代表あいさつ
総会本会議場で14日、日本使用者代表演説を行った谷川部会長は、安倍政権の経済運営(アベノミクス)に触れ、3本目の矢である構造改革を伴う「成長戦略」が最も重要であり、活発な企業活動による成長こそが雇用問題を解決するカギであることを強調。そのうえで、雇用を生み出す企業活動の柔軟性と雇用の多様性を確保することが、ILOが提唱するディーセント・ワークをつくり出し、労働者保護につながるとした。
また、総会で扱われる三つの議題(人口動態変化、グリーン・ジョブ、社会対話)について、いずれの課題も日本として、先進的に取り組みを行ってきているものであり、今回の議論において日本使用者として十分貢献できるとした。そのうえで、日本使用者としての基本的な認識として、ILOは関連条約の批准促進という制度的枠組みに頼るのではなく、加盟国がそれぞれの国を取り巻く事情に応じた取り組みが行えるよう、好事例の収集と広報などの施策に注力すべきことを強調した。
■ ミャンマー制裁措置の恒久的解除
強制労働条約違反であるとして、1999年からミャンマーに課していた技術協力提供や会議参加の制限については昨年の総会で解除された。今年は1年間停止とされていた二つの措置((1)ミャンマー問題に関する特別会合の開催(2)各国政労使に対して、ミャンマーとの関係を見直し、同国の強制労働を助長しないよう適切な措置を取ること)についても解除することを決定。これによりミャンマーに対する制裁措置を恒久的に撤廃することが決定された。
■ ファンロンパイ欧州理事会議長特別演説
14日には、ヘルマン・ファンロンパイ欧州理事会議長が特別演説を行い、EU内の失業率の上昇との闘いが今日の優先的な政策事項であることを強調。若者の就業の問題にも触れ、最も影響が深刻な8カ国80万人の若者に直接利益が及ぶように欧州理事会が相当額のEU資金を振り向けたことや、若者が卒業後または無職になってから4カ月以内に雇用、訓練または教育の機会を提供する若者保証事業の導入を全EU諸国が公約したことを紹介した。今月末に予定されているEUサミットで、失業問題を中心的なテーマとすることについても言及した。
■ ハイレベル・パネル討議
17日には、「信頼感の回復=仕事、成長、社会進歩」と題して、国連アフリカ経済委員会のロペス事務局長、ジュネーブ大学のフルーキッガー副学長、国際使用者連盟(IOE)と国際労働組合総連合(ITUC)の代表によるハイレベル・パネル討議が行われた。
討議の冒頭、ライダー事務局長から「仕事はどこから来るのか」という課題が提起され、仕事の量と質の両方が重要であることを強調した。IOEのデ・リオハ筆頭副会長は、景気回復における民間部門の重要性に触れ、成長には三者構成主義や若者の雇用創出が必須であることに加え、厳格な雇用規制など成長の障害になるものの除去が必要であることを強調した。
【国際協力本部】