新設される会社分割法制に伴う税制措置のみならず、現行制度を活用した会社分割についても、企業組織再編に対する税制の中立性の観点から、同様に課税繰延べが必要である。
まず、子会社株式を親会社株主に交付して、親会社の株式の有償消却を行う場合(アメリカにおけるスプリット・オフと同様の方式)、親会社における子会社株式の譲渡益を認識しないこととともに、親会社株主に対するみなし配当課税を行わないことが不可欠である。
また、子会社株式を親会社株主に現物配当する場合(アメリカにおけるスピン・オフと同様の方式)、親会社における子会社株式の譲渡益課税の繰延べとともに、親会社の株主が受け取る現物配当に対する非課税措置が欠かせない。
企業グループ全体としては不動産の保有状態に何ら変更のない企業組織変更(合併・分割・分社化・営業譲受)に際しての不動産移転に関する登録免許税については、まずもって軽減が必要である。
また、企業組織再編に対する税制の中立性の観点から、会社分割、分社化、株式移転・株式交換にかかる設立登記・資本増加登記の登録免許税は、合併と同様(1000分の7→1000分の1.5)にすべきである。
不動産取得税については、合併または一定の要件を充たす会社分割・分社化による不動産の取得の場合は、非課税とされているが、組織再編に対する課税の中立性の観点から、すべての会社分割・分社化全般について非課税とすべきである。自動車取得税・特別土地保有税も同様である。
企業は、経済環境や需要構造の変化に迅速に対応し、その組織を柔軟に改編していくことが必要である。特に、経営資源の集中や新規事業展開を行なうために、戦略的分社化や企業グループ全体を括り直す動きが進みつつあり、さらに持株会社の解禁によって、本格的なグループ経営の時代を迎えている。
一方、すでに企業会計制度においては、従来の単体重視から連結重視へと方向転換がなされており、税制面でも、グループ経営の進展に対応するために、企業グループを一体とした納税の仕組みである連結納税制度を早期に整備する必要がある。
企業が経営環境に応じた事業組織形態を選択する上で、税制は中立的であるべきである。しかし、現行制度は会社分割、分社化などの組織再編に対して中立性を欠いている。
連結納税制度の導入により、子会社形態を通じて新規事業分野への展開や既存事業の再構築を行うに際しての、キャッシュフロー上のマイナスを取り除き、税制を企業経営に対してより中立的なものに改めることで事業組織形態選択の自由度を拡げ、結果として企業活力の強化を通じて経済の活性化につながる。国際的にも、先進諸外国の大部分が、何らかの形で企業グループを一体として納税する方法を採用しており、わが国においても、連結納税制度の導入は、これ以上先送りすることのできない課題である。
昨年末の自民党税制改正大綱においては、「日本経済を支える企業の国際競争力を諸外国と同等の条件とし、日本経済の活性化を促すため」、「2001年を目途に連結納税制度の導入を目指すこと」が明記されており、政府として直ちに具体的な検討に入ることを求める。
分割型の新設分割・吸収分割を行なった場合に、株主は非公開会社の株式を持つこととなる場合があるが、流通性の乏しい株式を分配されることを理由として、新設分割・吸収分割に反対する株主が出ることも想定されることから、円滑な事業の再構築に支障をきたす可能性が高い。
そこで、分割型又は一部分割型の会社分割に関し、分割後、すぐにでも公開が可能となるよう、株式市場の規則を整備すべきである。
分割に際して、各種許認可を円滑に承継・新規取得できないと、事業活動に大きな支障が出る。各種許認可を円滑に承継・新規取得できるよう、関連法制・運用を整備すべきである。