わが国企業が経済環境の変化に迅速に対応し、引き続き国際競争力を維持・強化していくためには、企業組織を柔軟に改編させていくことが必要不可欠である。こうした観点から、1997年10月施行の合併法制の合理化、1999年8[email protected])$N3t<08r49!&3t<00¥E>$NF3F‾$K0z$-B3$-!"2q
会社分割の制度を実効あるものとするためには、商法のみならず、税法、株式市場規則等の関連諸制度の整備が不可欠である。政府、関係方面一体となって、関連諸制度を整備するよう望む(関連諸制度の整備に係る要望については、<別紙>参照)。
「中間試案」は、権利義務の一部を設立する会社(承継する会社)に承継させる新設分割(吸収分割)は認めているが、権利義務の全部を承継させる新設分割(吸収分割)を認めているかどうか、明らかではない。また、設立する会社(承継する会社)が複数ある場合を認めているかどうか、明示していない。
しかし、会社が、その権利義務の全部を設立する会社(承継する会社)に承継させるために行なう新設分割(吸収分割)も認めるとともに、設立する会社が複数の場合も認められることを明確にすべきである。
〈理由〉
既存の事業会社が純粋持株会社形態の経営体制に移行する場合に、従前の複数の事業部門(子会社)を設立する会社(承継する会社)とし、その権利義務の全部を、それらの複数の設立する会社(承継する会社)に承継させ、いわゆる「抜殻方式」による純粋持株会社への移行と類似の結果を生じさせるニーズがある。
新設分割・吸収分割において、権利義務の一部の承継しか認められないとすると、既存の事業会社が純粋持株会社形態の経営体制に移行するには、株式移転を行なった上で分割型の新設分割(吸収分割)を行なう必要が生じ、手続が煩雑となる。
新設分割・吸収分割に係る手続(株主総会の特別決議による承認、反対株主に対する株式買取請求権の付与、債権者保護手続等)は、株主保護、債権者保護の観点から、株式移転および分割型の新設分割(吸収分割)における手続と同様の内容を含んでおり、新設分割・吸収分割の手続を行なえば、権利義務の全部の承継を認め、かつ、設立する会社(承継する会社)が複数あるケースを認めたとしても、株主、債権者の権利を害するという弊害はなく、禁止すべきではない。
分割計画書(分割契約書)の記載事項の項目
分社型の新設分割・吸収分割については、分割計画書・分割契約書の記載事項は、それぞれ以下の通りとすべきである。
[分社型の新設分割]
「(1)分割によって設立する会社の定款の規定」、「(2)設立する会社が分割に際して発行する株式の種類及び数」、「(3)設立する会社の資本の額及び準備金に関する事項」、「(5)設立する会社の取締役及び監査役の氏名」は、分割計画書の記載事項とすべきではない。
[分社型の吸収分割]
「(1)分割によって権利義務を承継する会社が分割により定款の変更をするときは、その規定」、「(2)承継する会社が分割に際して発行する株式の総数、額面無額面の別、種類及び数」、「(3)承継する会社の増加すべき資本の額及び準備金に関する事項」、「(11)承継する会社につき分割に際して就職すべき取締役又は監査役を定めたときは、その規定」は、分割する会社においては、株主総会の承認を要する分割契約書の記載事項とすべきではない。
〈理由〉
分社型の場合において、上記の事項を、分割する会社の株主総会の承認事項とすることは、一般の親子会社関係において、上記の事項が親会社の株主総会の承認事項とされていないことと整合性が取れない。
分社型の場合には、上記の事項は、設立する会社(承継する会社)に対する分割する会社の株主権の行使に係る問題と捉えるべきであり、分割する会社による株主権の行使が不適切な場合には、分割する会社の株主は、分割する会社の取締役等の責任を追及すれば足りる。
分割計画書(分割契約書)に記載すべき承継する財産および債務に関する事項の記載内容[1ページ、9ページ]
分割計画書(分割契約書)に記載すべき「承継する財産及び債務に関する事項」は、現行の営業譲渡における「行為の要領(商法245条第2項)」の程度の詳細さ(簡略さ)とすべきである。
現行の営業譲渡における「行為の要領」よりも詳細な情報開示を求めるのであれば、株主総会に付議する分割計画書(契約書)は、比較的簡略なものとし、詳細は備え置き書類において開示すべきものとすべきである。
なお、分割計画書(契約書)の「承継する財産及び債務に関する事項」における承継する財産及び債務の特定度合いにより、分割の登記が受理されないようなことのないよう、登記実務の運用がなされるべきである。
〈理由〉
新設分割・吸収分割において生じる財産及び債務の移転は、株主にとって、現行の営業譲渡において生じるものと変わりはなく、分割計画書(分割契約書)において営業譲渡における「行為の要領」よりも多くの記載を課する必要はない。
また、分割計画書(分割契約書)における「承継する財産及び債務に関する事項」の記載が詳細なものとなると、株主にとってかえってわかりにくいものとなるおそれがある。
さらに、詳細な「承継する財産及び債務に関する事項」を記載した分割計画書(分割契約書)を、株主総会の議案の要領として株主に送付することは、会社にとって、大きな負担となる。
分割計画書(契約書)の「承継する財産及び債務に関する事項」における承継する財産及び債務の特定度合いにより、分割の登記が受理されないこととなれば、新設分割・吸収分割の法的な安定性を著しく阻害することとなる。
「営業年度の終わりにおいて分割する会社の貸借対照表上の純資産額を発行済株式総数をもって除した額が5万円を満たないおそれがあるとき」に、株式の消却又は併合を義務づけるべきではない。
また、分割する会社において、資本の欠損が生じる場合や債務超過となる場合について、分割が行なえることとすべきである。
〈理由〉
新設分割・吸収分割において、一定の場合に、株式の消却、併合を義務づけることは、自益権しかなく流通性に乏しい単位未満株や端株を保有する株主を生じさせることとなり、株主平等の原則に抵触するとともに、新設分割・吸収分割が小株主の締出しに使われる可能性を招来する。
また、現行法上、「純資産額を発行済株式の総数をもって除した額」が常に5万円以上となっているわけではなく、新設分割・吸収分割の場合にのみ、株式の消却、併合を義務づけることは、整合性に欠く。
さらに、そもそも、出資単位の細分化の防止は、市場原理に基づき個々の企業が株主管理コストの負担との兼ね合いで行なえばよいことであり、法律で強制すべきではない。
分割する会社において、資本の欠損が生じる場合や債務超過となる場合であっても、債権者保護手続がとられており、異議のある債権者はその旨申述する機会が与えられている。したがって、分割する会社において、資本の欠損が生じる場合や債務超過となる場合の新設分割・吸収分割を認めたとしても弊害はなく、禁止すべきではない。
判明していない債権者に対して各別の催告を行うことはできないが、「中間試案」からは、こうした債権者の債権について、分割する会社と設立する会社(承継する会社)が2年間連帯して債務を負うこととなるのかどうか、明らかでない。
無記名社債権者等は、判明していない債権者と考えられるが、少なくとも無記名社債等に係る債務については、各別の催告が行なわれなかった場合でも、分割する会社と設立する会社(承継する会社)が2年間連帯して債務を負うこととすべきではなく、何らかの手当てが必要である。
〈理由〉
判明していない債権者に各別の催告を行なうことは不可能である一方、こうした債権者は、分割無効の訴えを提起することが可能であり、一定の保護がなされている。
特に、無記名社債権者等に関し、分割する会社と設立する会社(承継する会社)が連帯して2年間債務を負うこととすると、多額の社債等の債務について、法的な関係が確定しないこととなり、適当ではない。
判明している債権者に対する各別の催告の懈怠のみで、新設分割・吸収分割の無効事由となることがないようにし、事後に債権者の債務が弁済等により満足を受ければ、分割無効の訴えは棄却されることを明確にすべきである。
〈理由〉
判明している債権者に対する各別の催告の懈怠があれば、当該債権者の債権は、分割する会社と設立する会社の2年間の連帯債務となることとされており、一定の保護がなされている。
「判明している債権者」の範囲が明確でない中で、一部の債権者に対する各別の催告を怠ったことのみにより新設分割・吸収分割が無効とされた場合には、分割を原状に戻すコストは大きく、法的な安定性に欠ける。
新設分割においても、承継された営業の範囲内で、分割する会社のみが、競業禁止義務を負うとするべきである。
〈理由〉
新設分割を分析的に捉えれば、新設分割に伴う営業の移転は、現行法上の営業譲渡と異なるところがなく、現行の商法25条の範囲で競業を禁止すべきであり、それ以上に範囲を広げるべきではない。
「中間試案」では、承継する会社が新株発行や増資を行なわない吸収分割が認められるかどうか明らかでない。しかし、新株発行や増資を行なわない吸収分割を認めるべきである。
〈理由〉
吸収分割にあたって、承継する財産と承継する債務が均衡している場合には、新株発行・増資を行なう余地はなく、承継する債務より承継する財産が多い場合には、新株発行・増資に代えて、承継する財産・債務の対価を現金等の資産とすることが考えられる。こうした場合においても、株主総会の特別決議による承認や反対株主への株式買取請求権の付与、債権者保護手続等の吸収分割の手続を行なっていれば、株主、債権者を害することはなく、禁止する理由がない。
こうした吸収分割に対するニーズは、特に兄弟会社間や100%親子会社間で大きい。
「(10)各会社が分割の日までに利益の配当又は第293条ノ5第1項の金銭の分配をするときは、その限度額」が分割契約書記載事項とされているが、承継する会社の配当についてのみ、その限度額を記載するものとすべきである。
〈理由〉
吸収分割において、分割する会社による配当は、分割比率に影響を与えることはなく、分割契約書の記載事項とする必要はない。
承継する会社における債権者保護手続は、商法412条と同様、定款に定める時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙による公告を行なえば、各別の催告を省略できることとすべきである。
〈理由〉
吸収分割における承継する会社は、債権者との関係において、吸収合併における吸収会社と変わるところがなく、債権者保護手続において、現行の吸収合併以上の手続を課す必要はない。
吸収分割において、承継する会社で簡易な分割の手続が認められる場合(すなわち、承継する会社の定款変更がなく新たに役員が選任されない場合)には、分割型についても、分割する会社における簡易な分割の手続を認めるべきである。
〈理由〉
吸収分割において、分割する会社の株主が保有する財産的価値は、吸収分割の前と後で理論上異なるところがない。こうした中で、承継する会社で簡易な分割の手続が認められる場合には承継する会社の定款変更・役員選任がなく、分割型において、分割する会社における簡易な分割手続を禁止する合理的な理由がない。
株主総会の特別決議による承認によって、いわゆる一部分割が可能であるとされているが、この場合に、債権者保護手続、簡易分割等がどのような取扱いになるのか、確認したい。
〈理由〉
会社分割を行なっても、引き続き支配権を維持する一部分割のニーズは強く、この手続について、法的な安定性を確保したい。
スピン・オフ、スプリット・オフともに、解釈上可能であることを確認したい。この場合の手続は、スピン・オフについては、利益配当と捉え、株主総会の普通決議で、スプリット・オフについては、減資、資本準備金による自己株式消却、利益による自己株式消却等の手続により、子会社株式を対価として、自己株式を買い入れることにより可能であることを確認したい。
また、相対による自己株式の取得を認めるべきである。
〈理由〉
解釈上可能であることが明確にされないと、法的な安定性に欠け、利用することが困難である。
スピン・オフ、スプリット・オフともに、既存の子会社の株式を株主に分配する場合に、利用のニーズがある。
相対による自己株式取得は、公開会社が時価で行なうのであれば、株主平等の原則に反することはなく、また、これを認めることにより、非按分型の会社分割のニーズの一部に応えることとなる。
営業の全部譲受については、営業譲受の対価が、譲受ける会社の純資産の10分の1を超えない場合には、商法245条第1項に定める株主総会の特別決議による承認を得ることを要しないものとすべきである。
〈理由〉
他の会社の営業の全部を譲受ける場合であっても、必ずしも譲受会社の株主に重要な影響を与えるものばかりではなく、その規模によっては、株主総会の特別決議による承認を必要としない簡易な営業の全部譲受の手続を認めるべきである。
営業の重要な一部の譲渡については、「重要な」の基準を明確化し、営業譲渡の対価が、譲渡会社の純資産の10分の1を超えない場合には、商法245条第1項に定める株主総会の特別決議による承認を得ることを要しないものとすべきである。
〈理由〉
「重要な」の基準が明確でなく、法的な安定性に欠ける。なお、基準を設ける場合には、「中間試案」で提案されている分割する会社における簡易な分割の手続に合わせ、純資産の10分の1を超えない場合とすべきである。
分割型の新設分割・吸収分割において、設立する会社(承継する会社)の株式の割当てを望まない株主(例えば、従業員持株会)に対しては、「相当な金銭」を交付することが、株主総会の特別決議による承認を受けることにより可能となるような手当てを検討すべきである。
〈理由〉
新設分割・吸収分割自体には反対しないが、設立する会社(承継する会社)の株式の割当てを望まない株主がいることが想定されるが、こうした場合に、相当の金銭を交付することが可能であれば、より柔軟な手続となる。
非按分型の会社分割は、非公開会社を中心に利用のニーズがあると考えられるが、総株主の同意という要件が厳格に過ぎ、利用を阻害すると考えられる場合には、株主平等の原則との整合性をとりつつ、要件の緩和について検討すべきである。
新設分割・吸収分割手続における転換社債、新株引受権付社債、ストック・オプションの取扱いが不明確であり、明確にすべく検討すべきである。
具体的にどの程度の記載が求められるのか確認したい。