日本経団連タイムス No.2803 (2006年3月2日)

与党年金制度改革協議会ヒアリング

−被用者年金の一元化で日本経団連の意見説明


日本経団連は2月21日、厚生年金と共済年金の被用者年金一元化に関する問題で、与党年金制度改革協議会(座長=自民党丹羽雄哉元厚生相)による関係団体のヒアリングに応じ、社会保障委員会年金改革部会の岡本康男部会長が、昨年10月に発表した『公的年金の一元化に関する基本的見解』2005年10月27日号既報)に基づき日本経団連の意見を説明した。

岡本部会長は、まず、同協議会が昨年12月にまとめた「被用者年金一元化についての考え方と方向性」におおむね賛同していることを示し、被用者の負担と給付の公平性の観点から、民間準拠の精神にのっとり、共済年金を厚生年金に合わせる方向で、被用者年金(2階部分)の一元化を先行統合すべきであるとした。そのためには、(1)職域年金(3階部分)は、企業年金と退職一時金を合わせて民間準拠となるよう、廃止を視野に退職年金制度全般を見直す必要があること(2)保険料率は、過度な国民負担とならないよう、また国・地方の共済保険料には事業主負担として税金が財源となっていることも勘案し、15%を上限に止めるべきであること(3)積立金は、できるだけ早く統合し、一体的な運用を図るのが望ましいこと(4)福祉事業施設は、その整備に積立金を投入しないことを原則とし、採算性などを考慮し必要性を検討すべきであること(5)共済特有の制度である転給制度は廃止すべきであること――などの考えを示した。また、その後の意見交換では、追加費用については、国民の税負担を極力減らす方向で改革すべきであると言及した。

この日は、日本経団連のほかに、日本労働組合総連合会(以下連合)、全国市町村職員共済組合連合会(同市町村共済)、公務公共サービス労働組合協議会(同公務労協)、全私学連合(同私学)の4団体がヒアリングに応じた。連合は、全雇用労働者の厚生年金適用が一元化の前提であるとし、また、職域年金は、市町村共済、公務労協同様、公務員の労働基本権の回復を図った上で、企業年金の給付水準との比較により判断されるべきであるとした。市町村共済は、統合方式について、現在の医療・福祉・年金の一体運営の堅持、福祉施設への貸付の継続、地方債等の取得努力義務などから、積立金の統合ではなく、財政単位の一元化とすべきとした。私学は、職域年金が税金投入のない私的年金であると主張し、制度は維持されるべきであること、さらに私学振興・教職員への支援貸付などの必要性を訴えた。4団体とも、追加費用は、国、地方の責任で引き続き負担すべきとし、保険料率の統一については、過去の経緯を踏まえ急激な負担増とならないよう配慮されるべきであるとした。

最後に丹羽座長は、将来的には国民年金も含めた一元化を展望していくが、まずは現実路線として被用者年金の一元化をめざし、公的年金制度の安定性を高めていかなければならないと述べた。また、そのためには、国民が持つ官民格差に対する不満の解消や、特に若年層の世代間不公平に関する不満に十分に配慮していく必要があるとし、既裁定者の給付減額について、前向きな姿勢を示した。
なお、同協議会は今回のヒアリングを参考に、被用者年金一元化についての基本方針を取りまとめ、4月末の連休前には閣議決定したいとしている。

【国民生活本部年金担当】
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