日本経団連タイムス No.2789 (2005年10月27日)

公的年金一元化で基本的見解発表

−「2階部分」の統合先行/厚生年金保険料率15%を上限に


日本経団連(奥田碩会長)は18日、公的年金一元化に関する基本的見解を発表した。同見解は、これまでに日本経団連が発表してきた社会保障制度等の一体的改革に関する意見などを踏まえ、現段階での年金一元化に関する基本的なスタンスを改めて取りまとめたもの。与党では、おそくとも2009年までに被用者年金一元化について結論を出そうとしており、また、前国会で設置された「年金制度をはじめとする社会保障制度改革に関する両院合同会議」においても一元化を含む年金制度改革について結論を出すこととしている。日本経団連では、公的年金一元化に関する経済界の現段階での考え方を明らかにし、今後の具体的な取り組みが行われるよう関係方面に働きかけていく。同見解のポイントは次のとおり。

1.被用者年金部分(2階部分)の統合を先行する

厚生年金保険は、公的年金一元化に関する1984年の閣議決定を前提に、農林漁業団体職員共済年金などの統合を引き受けてきた。残る国家公務員、地方公務員および私立学校教職員の各共済年金の2階部分についても、できるかぎり早期に厚生年金に統合していくべきである。統合にあたっては、共済年金の転給制度の廃止、職域加算部分(事業主負担部分)の退職金制度と合わせた民間企業なみへの調整、保険料率の厚生年金への統一、厚生年金なみの積立度合いに相当する積立金の厚生年金への移管――など、給付と負担を厚生年金に合わせる方向で見直すべきである。

2.国民に共通する所得比例年金の導入は、将来の選択肢の1つ

国民に共通する所得比例年金導入の前提として解決すべき課題は、(1)被用者・自営業者間の所得捕捉・保険料徴収の公平の確保 (2)自営業者の所得比例保険料負担に対する納得 (3)社会保障、社会福祉制度、納税制度に共通する番号制および社会保障個人会計の導入と普及 (4)生活保護水準の是正などによる社会保障制度の整合性の確保――等が挙げられるが、いずれも制度の実施と効果の確認に時間を要するため、当面は現行の2階建ての仕組みを維持しつつ合理化を進めていかなければならない。

3.厚生年金保険料率は15%を上限に

マクロ経済スライド終了後(政府想定では2023年度)も、出生率の回復がなければ被保険者数は減少するおそれが強い。厚生年金保険料率の引き上げは15%までに留め、税制や社会保障制度の一体的改革により、さらなる給付水準の見直し、高額給付部分の抑制措置の追加、現行のマクロ経済スライド終了後も被保険者数の減少分を給付抑制に反映する措置の継続などを検討すべきである。
1階部分は将来的には税方式化をめざすが、当面は2009年度に2分の1となった後の基礎年金の国庫負担割合について一体的改革の議論の中で再検討を求める。この追加的給付抑制が国庫負担額の減少につながらないよう、少なくとも現行の給付・負担方式(国庫負担割合2分の1)に基づいて算出した国庫負担額は確保されるべきである。

【国民生活本部年金担当】
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