与党では、2009年までのできるだけ早くに、被用者年金一元化に関する結論を出そうとしており、また前国会で設置された「年金制度をはじめとする社会保障制度改革に関する両院合同会議」においても一元化を含む年金制度改革について先行して結論を出すこととしている。日本経団連では、社会保障制度等の一体的改革について意見を発表してきたが、現段階で、これまでの意見を踏まえて、年金一元化に関する基本的スタンスを下記のとおり、あらためてとりまとめた。
厚生年金保険は、「1995年を目途に公的年金制度全体の一元化を完了させる」という1984年の閣議決定を前提に、船員保険(職務外年金部分)、旧公共企業体職員共済年金、農林漁業団体職員共済年金の統合を引き受けてきた。
残る国家公務員、地方公務員および私立学校教職員の3グループの共済年金の2階部分についても、厚生年金に統合していくべきであると考える。
統合にあたっては、これら3グループの共済年金の給付と負担は、厚生年金に合わせる方向で見直すべきである。例えば、共済年金における遺族年金の転給制度、職域加算部分の存在、割安な保険料率(厚生年金相当部分)など、厚生年金よりも優遇されている部分である。
転給制度については廃止すべきであり、また、公務員の労働条件全般は民間準拠とするという考え方に立って、公務員グループの共済組合の職域加算部分(事業主負担部分)については、退職金制度と合わせて民間企業なみにしていく必要がある。保険料率についても、基本的に厚生年金に合わせるべきである。
積立金については、厚生年金なみの積立度合いに相当する部分を厚生年金に移管するなど、公平な取り扱いになるよう調整する。
なお、3共済年金の事務(納付記録・裁定・給付など)については、社会保険庁を解体して創設される「新年金組織」が統合して実施することとし、公的年金保険料は事業主としての各組織が徴収し、「新年金組織」に納付するようにすべきである。
これらの統合は、できるかぎり早期に実現することが望ましい。
公的年金一元化に関連して、自営業者までを含めた国民に共通して所得比例の年金を導入するかどうかという課題が議論されているが、こうした改革は将来の選択肢の一つと考える。
この改革を実現するためには、社会的公正・公平などを確保する観点から、まず次のような課題を解決することが求められる。
例えば、(1)被用者と自営業者などの間の所得捕捉・保険料徴収の公平の確保、(2)自営業者の所得比例保険料負担に対する納得、(3)社会保障、社会福祉制度、納税制度に共通する番号制および「社会保障個人会計」の導入と普及、(4)生活保護水準の是正などによる社会保障制度の整合性の確保、などがある。
いずれも制度の実施とその後の効果の確認に時間を要するものである。したがって、公的年金制度については現行の2階建ての仕組みを維持しつつ、その中で合理化を進めていかざるをえない。
2004年の年金制度改正で、(1)厚生年金保険料率を毎年0.354%ずつ引き上げ、2017年から18.3%で固定する(国民年金保険料も毎年引き上げ)、(2)マクロ経済スライド制を導入して、年金給付の増加を抑える、こととなった。
日本経団連は、今回の公的年金改正にあたって、(1)厚生年金保険料率の上限は15%に止めるべきである、(2)財政悪化が見通される場合には年金給付で調整を図る恒久的自動安定化措置を設けるべきである、などと主張した。
今回のマクロ経済スライドは、政府の想定どおりであれば、2023年度に終了する予定である。しかし公的年金の被保険者数は、わが国の出生率が回復しなければその後も減少するおそれが強い。
したがって、世代間の給付と負担の均衡を回復するなどの観点から、厚生年金保険料率は段階的に引き上げるにしても、15%に達した時点で引き上げを止め、他方、税制の抜本改革や社会保障制度の一体的改革においてさらなる給付水準の見直しを検討すべきである。また高額給付部分の抑制措置を追加し、現行のマクロ経済スライド終了後も、公的年金被保険者数の減少分を給付抑制に反映する措置を継続すべきである。
1階部分については将来的には税方式化することを目指す。当面は、2009年度に2分の1となった後の基礎年金の国庫負担割合についても、一体的改革の議論の中で再検討を求める。また上記の追加的給付抑制が国庫負担額の減少につながらないよう、少なくとも現行の給付・負担方式(国庫負担割合2分の1)に基づいて算出した国庫負担額は確保されるべきである。
なお、保険料未納があればそれを給付に反映しないとする現行の取り扱いは継続する。仮に将来、税方式に移行した場合でも、またそれまでの移行期間においても、過去に未納期間に関する同様な措置は続けるべきである。