経営タイムス No.2701 (2003年11月27日)
日本経団連の奥田碩会長は21日、山口信夫・日本商工会議所会頭、北城恪太郎・経済同友会代表幹事、下妻博・関西経済連合会副会長ら経済団体の代表者とともに、東京・永田町の首相官邸に小泉純一郎首相を訪ね、厚生年金保険料率引き上げに対して反対を表明するとともに、日本とタイ、フィリピン、マレーシアとの経済連携協定の早期交渉開始を要望した。懇談の冒頭、奥田会長は、公的年金改革と経済連携協定の2点について経済界の意見を説明することが今回の訪問の目的であるとあいさつ。
まず、保険料率20%への引き上げ等を盛り込んだ公的年金改革の厚生労働省案が17日に発表されたことについて、「保険料率20%への引き上げが決定されたかのような報道がされている」と懸念を示した。その上で、「経済界として、経済活性化や雇用への影響などの点から反対である」ことを改めて表明。今回訪問した経済4団体が共同で18日に発表した意見書「抜本改革なき厚生年金保険料率の引き上げに反対する」(11月20日号既報)を小泉首相に手渡した。
続いて、山口・日本商工会議所会頭が、日本経団連、日本商工会議所、経済同友会、日本貿易会の経済四団体が同日に発表した共同意見書「日タイ、日フィリピン、日マレーシア経済連携協定の早期交渉開始を求める」の概要を説明。このなかで山口会頭は「(タイ、フィリピン、マレーシアの)3カ国との経済連携協定は日本の産業力強化と経済の活性化の観点から不可欠である」と指摘するとともに、12月に予定している日・ASEAN特別首脳会議の際に、経済連携協定に係る政府間交渉開始の合意が得られるよう小泉首相に要望した。
北城・経済同友会代表幹事からは、「メキシコとの自由貿易協定(FTA)も遅れているのでこちらもお願いしたい」との発言があった。
これに対して小泉首相は、メキシコとのFTA交渉については現地への官邸スタッフの派遣を予定するなど対応していると説明するとともに、「メキシコは(FTAを締結すると)日本だけが有利になると言うが、実際は違う」と述べた。
また、FTAに関連して奥田会長は「FTAのことになると、経済界と農業界が対立の構図にあるかのように描かれるが、現実はそうではない。(意見交換を行うなど)きちんとやっている」と語った。