2003年11月18日 |
(社)日本経済団体連合会 会長 奥田 碩 |
日本商工会議所 会頭 山口 信夫 |
(社)経済同友会 代表幹事 北城 恪太郎 |
(社)関西経済連合会 会長 秋山 喜久 |
今回の公的年金改革にあたっては、公的年金制度に対する国民の信頼を回復し、経済・雇用との関係も含め持続可能性を高めるという視点が不可欠である。そのため、厚生年金保険料の増加をできるかぎり抑制し、現役世代の過重な負担を回避すること、また年金給付を段階的に抑制することで、世代間の給付と負担の格差を是正すること、さらに世代内の公平の観点から基礎年金を税方式化する抜本改革を断行すべきである。
しかしながら、厚生労働省はこうした抜本改革を行わずに厚生年金保険料率の将来の引上げを法定しようとしており、これは保険料を負担する現在及び将来の勤労者、企業の活力を殺ぐことになる。
厚生年金は強制加入の制度であり、保険料が実質的に賃金課税に等しいことを考えれば、保険料率の引上げは雇用コストの上昇を通じて、大企業のみならず、とりわけ中小企業の収益を圧迫し、厳しい国際競争の中にあるわが国企業の競争力の低下を招くとともに、新規雇用にも著しく悪影響を及ぼすことが予想される。日本経団連、日商、関経連などの企業を対象にした緊急調査においても、厚生年金保険料の引上げに対して強い懸念を表明しており、万が一、引上げられる場合には労働条件や雇用の調整を検討する、あるいは事業所の海外移転などを検討するといった企業が多い。これらが現実化すれば年金財政ばかりでなく、日本経済全体に一層、深刻な影響を与えることになる。
加えて、年金制度改革のみ先行して決めるべきではなく、将来にわたり潜在的国民負担率を50%程度までに止めるよう、税・財政・社会保障全体の改革をパッケージとした案を国民に示し、結論を得るべきである。
産業界の総意として合意した下記の点について、国民、関係各位の理解を求める。
年金給付抑制および基礎年金の税方式化などの抜本改革の展望がないまま、保険料率の引上げを法定することに、絶対反対する。
当面の改革として、基礎年金の国庫負担割合を2分の1にするための道筋を明確にするべきである。
税・財政・社会保障の一体的改革案を国民に示し、結論を得るべきである。
「【緊急調査】年金改革の企業行動に与える影響について」の集計結果
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