経営タイムス No.2683 (2003年7月10日)
日本経団連(奥田碩会長)と東北経済連合会(八島俊章会長)は3日、宮城・仙台市のホテル・メトロポリタン仙台で「第36回東北地方経済懇談会」を開催した。「民主導・自律型の経済社会の実現と東北産業経済の再生に向けて」を基本テーマに、奥田会長はじめ首脳役員、東経連会員など約250名が参加。国と東北地方が抱える諸問題について、意見を交わした。奥田会長は、社会保障制度や財政の再構築、競争基盤の強化、地方の特色ある発展の実現への取り組みを強調した。
開会のあいさつで東経連の八島会長は、東北経済の現状を「予断を許さない状況」と表し、その克服には、「産業構造の転換や地域を取り巻く環境の変化に対して機動的に対処することが最も重要だ」と強調した。
また、東経連が取り組むべき最重要課題として、(1)東北の産業経済の再生と新産業・新規事業の創出(2)東北の総合力発揮に向けた広域連携の推進――を挙げ、これらの事業のためには、高速交通体系や情報通信など基礎的社会資本の整備が不可欠だと指摘した。
続いてあいさつした奥田会長は、日本経団連が年初に発表した新ビジョンがめざす「民主導・自律型の経済社会」の実現に向けた活動を今後、強力に展開していくとし、そのための重要課題として、(1)長期的に持続可能な社会保障制度や財政への再構築(2)グローバル競争を勝ち抜くための競争基盤の強化(3)地方の多様性を活かした発展の実現――の3つを挙げた。
その上で、これらの実現には、「政治と経済との緊張感を伴う真の協力関係が不可欠だ」と述べ、政治に対して諸改革の断行を求めるとともに、支援を行っていくことが必要との認識を改めて強調した。
活動報告ではまず、日本経団連側から、西室泰三副会長が税制改正をめぐる動向について、「国・地方を通じた財政支出の見直し、社会保障制度の抜本的改革とパッケージで捉えない限り、整合的な税体系を描くことはできない」と説いた。
次に、最近のエネルギー政策をめぐる動向について、柴田昌治副会長が説明。エネルギー問題は国民の社会生活に直結した問題であり、エネルギー政策の推進には国民全般の理解と協力、支持が不可欠であるとの考えを述べた。
住宅政策の取り組みを説明した和田紀夫副会長は、日本経団連が先月発表した提言「『住みやすさ』で世界に誇れる国づくり」で掲げた政策の実現に向け、今後、経済界全体として運動を盛り上げていきたいとの意向を示した。
政治への取り組みについて、宮原賢次副会長は、「経済界も政治に対して言うべきことは言うと同時に、必要な協力も行っていくべきである」と述べるとともに、日本経団連が5月に発表した新方式による政治寄付に理解と協力を求めた。
東経連側からはまず、東北産業経済の再生に向けた取り組みについて、松村富廣・評議員会議長が、技術優位による国際競争力の確保と、地域密着型産業の育成を柱に、具体的活動を展開していると報告した。
また、辻兵吉副会長は「東北広域観光推進事業の取り組み」の説明の中で、国内外の観光の振興促進のために、(1)観光客誘致のプロモーション活動の展開(2)受け入れ体制の整備(3)情報発信の強化――の3事業に積極的に取り組むと語った。
「広域連携の推進と基礎的社会資本の整備」について、勝股康行副会長は、基礎的社会資本が活力ある経済社会の形成に欠かせないとした上で、港湾・空港の機能強化や、港湾・空港への交通アクセスの整備促進を強く要望していると語った。
自由懇談では、東経連側から、人材確保・支援策への協力、北東アジア地域を中心とした国際交流の取り組み状況、観光産業の強化への取り組み、基礎的社会資本の整備、循環型社会の形成に向けた取り組み状況――などについて質問があった。
これらに対して、「政府への働きかけを強化し、地方の人材確保にでき得る限り協力したい」(西室副会長)、「北東アジアとの経済交流の緊密化に、あらゆる機会を捉えて努めている」(西岡喬副会長)、「訪日外国人観光客の増大と自然・農林漁業体験観光などの推進に取り組んでいる」(宮原副会長)、「“環境立国”の実現に向け、個人や企業、行政が戦略的に取り組むことを訴えている」(西岡副会長)――などと答えた。
最後に、奥田会長が総括。基礎的社会資本の着実な整備の必要性に言及したほか、地方経済の活力として規制改革と構造改革特区に期待を寄せた。