2003年5月12日 日本経団連 会長・副会長会議 |
日本経団連は、本年1月「活力と魅力溢れる日本をめざして」と題する新しいビジョンを発表した。同ビジョンでは、民間主導の経済社会を実現するため、30を超える重要政策を提案するとともに、日本経団連自らが、「公」を担う民間部門のリーダーとして、またコーディネーターとして、経済、政治の活性化に積極的に貢献するとの決意を表明した。
今日の国家的課題は、国民の将来不安を払拭すべく、日本経済を再生・活性化することである。企業は、この目的のため、自ら経営刷新に懸命の努力を続けている。しかし、厳しい国際競争に勝ち抜くためには、旧来の諸制度、諸法制の改革を断行して、企業、個人が自由に創意工夫を発揮できる環境を整備することが急務である。ドッグイヤーとも呼ばれる世界経済の急激な変化の中で政治の遅滞は許されない。政党は、改革断行の政策立案から実行に至る過程で、中心的な役割を担うべきである。
政党が現実の経済を踏まえて将来の政策を提示し、その評価を国民に委ねるのが政党政治本来の姿である。これが国民の政党離れを回避し、議会制民主主義の機能を回復する道である。緊迫した内外情勢の下にあっても、政党が政策立案とその実現に、ゆとりをもって専念できる環境が望まれる。企業、企業人も、政策や政治のあり方について積極的に発言するとともに、政党活動に要するコストの負担を社会貢献の柱の一つとして位置付け、応分の支援を行うべきである。
今こそ政治と経済が緊張感を伴う真の協力関係を構築し、日本復活策を実行に移すべきである。
翻って1993年9月、経団連は「企業献金については、廃止を含めて見直す」との方針を発表した。その後、政治資金規制が強化され政治資金の透明度が高まり、また一方で公的な政党助成が実現するなど、政治寄付を巡る環境は変わった。
他方、期待された個人寄付は伸び悩み、企業寄付は大幅に減少した。
その結果、公的助成への依存度を大幅に高めている政党が多いが、民主主義の根幹である政党の自立性・主体性の確保の上から、企業寄付を含む民間の自発的な寄付の意義を再認識すべきである。政党の必要資金は、党費・事業収入と民間の寄付を主体とし、公的助成はこれらを補完するものとして位置付けるべきである。
日本経団連では、上記のような認識に基づいて、政党へ透明度の高い資金を提供する仕組みを整備し、政策本位の政治の実現に協力していく。
具体的には、日本経団連内に以下の事項を検討する「政経行動委員会(仮称)」を設ける。
これらを参考にして、企業・団体が寄付先や寄付額を自主的に判断し実践するよう呼びかける。
なお、「優先政策事項」の設定とそれに基づく政党の評価に当たっては、外部の有識者の意見も聴取する。
企業寄付と同時に個人寄付の奨励策を提示する。その一環として、日本版PAC方式の導入や政治団体化を含め、企業人政治フォーラムの活動・機能の強化を検討していく。
また、公的助成や政治資金規制のあり方について、現状を踏まえて早急に検証していく。