第18回評議員懇談会(座長 那須 翔 評議員会議長)/3月23日
評議員懇談会を開催し、証券市場活性化、行政改革、環境問題、対アジア関係に関する経団連の取組みを報告するとともに懇談した。
景気の先行きは不透明感を増している。また、株価も引き続き低迷している。
金融・雇用面のセーフティネットは整っており、企業は、不採算部門を切り離し、ROEを向上させるなど組織再編、合理化に努めるべきである。一方、金融機関は、不良債権の処理を進めるべきである。
政府は、社会保障、地方財政、税制を包括した財政構造改革のグランド・デザインを策定し、改革の道筋を国民に示す必要がある。社会保障については、負担と給付をいかにバランスさせるかが重要な視点となる。「高齢者=弱者」との考え方を改め、高齢者にも応分の負担を求める必要がある。2002年度に予定されている高齢者医療制度改革は先送りすべきでない。また、国と地方の役割を明確に分け、地方の自助努力を促す必要がある。
金融システムを、直接金融と間接金融とがバランスのとれた姿に改めていく方向が打ち出されている中で、証券市場を支えるインフラも、これに見合うものにしていく必要があり、そのことが市場活性化につながるというのが経団連の基本的な考えである。
具体的な対策の第1の柱は、自己株式の取得・保有の原則自由化、いわゆる金庫株の解禁である。金庫株は、財務戦略、組織再編、企業年金の充実などに活用できる重要な経営手法であり、欧米諸国では広く認められている。第2の柱は、証券市場への個人投資家層の参画の拡大である。1,300兆円を超える金融資産を保有しながら、株式離れを起こしている個人層に株式投資を促していかなければ、持合構造の解消をはじめ証券市場の活性化は望むべくもない。そこで、配当やキャピタルゲインに係る所得税の減免を求めている。
【ご参考:証券市場活性化対策について】
具体的な規制改革要望を政府に提出するとともに、規制改革推進計画の継続的な策定と推進体制の強化を求めてきた。新設される審議機関を全面的に支援していく。
中央省庁改革が単なる枠組み変更に終わらぬよう、特に内閣機能を強化するために新設された内閣府と、そこに設置された経済財政諮問会議や総合科学技術会議が、総合的・機動的に役割を果たしていけるよう支援する必要がある。また、特殊法人や認可法人に関する情報公開法制の整備を急ぐ必要がある。さらに、特殊法人改革については、政府・与党が検討を具体化する段階で積極的な取組みを働きかけていく。
本格的な地方分権を実現するには、まず市町村の合併を推進し、受け皿を整備していく必要がある。人材の確保と財政基盤の強化も重要な課題であり、地方交付税交付金や補助金の地方への自動的な流入をなくし、受益と負担を明確にすることが急務である。
経団連では、2010年度に産業・エネルギー転換部門のCO2排出量を1990年度レベル以下に抑えるとの目標を定めている。1999年度は1990年度比ほぼ横這いである。他方、民生・運輸部門は未だに責任主体と具体策が明らかでない。このような中、新たなかつ不当な負担が産業界に課されぬよう主張していく。なお、国際交渉については、わが国が大きなダメージを受ける結果とならぬよう政府に求めていく。
廃棄物に関しては、2010年度の産業廃棄物最終処分量を1990年度の1/4に削減するとの目標を定めている。1999年度は1990年度比約6割減となり、着実に成果があがっている。企業にリサイクル義務を課せば問題は解決するといった議論に対しては、主張すべき点は主張していく。また、廃棄物関連施策の整備を進める「新資源産業センター」構想の実現に努力していく。さらに、不法投棄原状回復基金の運営に協力していく。
土壌汚染対策に関する法制化は対応を誤ると産業界に深刻な影響を与える恐れがある。適宜見解を取りまとめていきたい。
アジア経済は急速な回復を遂げたが、国毎には課題が残されている。米国経済の減速に伴う輸出の減少など懸念材料もあり、引き続き動向を注視していく。
シンガポールとの経済連携協定については、産業界の具体的要望を政府に伝えるなど、将来のモデルとなるような協定作りに協力している。また、韓国との自由貿易協定についても検討を開始しており、その結果を基に早期締結を働きかけていく。
通貨・金融危機の反省から、為替の安定がアジア経済発展に不可欠との認識が高まっており、円の役割が改めて注目されている。そこで、円の利用拡大について提言すべく検討を進めている。
日中協力の一環として環境植林プロジェクトの推進に取り組んでいる。また、貿易・投資、金融、インフラ整備と西部大開発、対中ODAのあり方などに関し具体的な提言を行うなど日中経済交流の拡大に努めている。
以上の他、APECの活動に意見を反映させていく。また、アジアにおける「良き企業市民」のあり方を探っていく。
株式持合解消への対策を含め、あらゆる措置を検討する必要がある。
2005年度末までの集中改革期間内に特殊法人改革を完了すべきである。政府全体の財務状況をわかりやすい形で国民に明らかにすべきである。
政府に頼ることなく、経済界自らが一層前向きに環境問題に取り組む必要がある。
シンガポールとの経済連携協定が自由貿易協定の良き先例となることを期待する。アジア諸国の良き隣人として振舞い、欧米に対する代弁者の役割を果たすことによって、アジア諸国との信頼・協力関係を強化すべきである。