一般社団法人 日本経済団体連合会
【九州経済】
〔九州経済の現状や、トランプ米大統領就任に伴って国際情勢が変化する中での九州経済の今後について問われ、〕九州の輸出は、中心となる半導体と自動車が好調であり、今後も強みとして残るだろう。
半導体産業はクラスターを形成することが重要である。素材メーカーや製造装置メーカーの集積に加え、電気・水といったインフラ、人材育成拠点、外国人労働者の生活環境などが整備されている必要がある。その点において、九州は優位性があり、ぜひ特長を活かして、半導体を輸出産業として強化していただきたい。
自動車については、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を前提に現地に進出している企業も含め、関税が適用されれば短期的には影響が生じることは間違いないだろう。株式市場では既に米国株が下落するなど反応も見られる中、中長期での影響を現時点で予測することは難しい。
【春季労使交渉】
〔集中回答日を迎えた今年の春季労使交渉についての現状の評価や中小企業の賃金引上げについて問われ、〕本日時点の金属業種等における春季労使交渉の結果は、多くの企業がベースアップを重視し、組合の要求に対する満額回答や、昨年を上回る高水準の回答をしていて、上々のスタートだと思う。経団連は、2023年を「起点」として、2024年に「加速」した賃金引上げの力強いモメンタムを、2025年は「定着」させる年と位置付けてきた。「定着」の見込みが確信に変わってきており、大いに期待している。
力強いモメンタム「定着」のカギを握るのは、働き手の約7割を占める中小企業の社員の賃金引上げである。その持続的な実現には、原資の確保が不可欠である。そのために、政府の支援も得ながら、デジタルトランスフォーメーション(DX)等による生産性の向上を進めるほか、労務費を含めた適正な価格転嫁の推進が重要である。経団連は、パートナーシップ構築宣言への参画を呼びかけており、サプライチェーンの中核を成す、資本金100億円以上の会員企業の約9割が表明するなど、広がりを見せている。他方、価格転嫁は大企業と中小企業のサプライチェーンだけでなく、中小企業と中小企業、あるいは中小企業と消費者との取引も対象であり、「良い製品・良いサービスには相応の値が付く」という当たり前のことをソーシャルノルム(社会的規範)として浸透させることが重要である。価格転嫁が広く受け入れられるためには、30年来のデフレマインドからの脱却が必要であり、時間を要するが、粘り強く取り組まなければならない。中小企業の結果を期待しながら待ちたい。
〔米国をはじめとする世界経済の不確実性が賃金引上げのモメンタムの「定着」に与える影響について問われ、〕トランプ関税は、ビジネスの予見可能性を低下させることが一番の問題であり、貿易や投資にマイナスの影響を及ぼすのではないかという懸念がある。経団連の目指す「物価に負けない賃金引上げ」は、政府・日銀の掲げる2%程度の適度な物価上昇を前提に、それをベースアップでカバーし、そこに生産性向上も加味して賃金に反映させることである。それを循環させることが、構造的な賃金引上げにつながっていく。大手企業でいえば、3年連続で良い結果が出てきており、これが中小企業にどこまで浸透していくか注視したい。
〔若手社員と比較して賃金が伸びていないとされる就職氷河期世代について問われ、〕就職氷河期に就職活動をされていた方は本当に気の毒であった。政府はここ5年間を集中期間として同世代の就労支援に取り組み、一定の成果があったと認識している。
現状は、人手不足を背景に、新入社員をはじめとする若年層の賃金引上げが先んじて進んでいるが、企業は本来、社員全体の生産性向上を目指すものである。今後、各企業は、職務内容や役割、成果を踏まえて、妥当な賃金カーブを設計されると思う。
また、現在は労働市場の流動化が進んできており、経験者採用の実施やその割合を増大している企業も多い。スキルに応じて職を得ることは十分可能であり、就職氷河期世代の方々が自身の能力を発揮できる場所を見つけ、活躍されることを期待している。