一般社団法人 日本経済団体連合会
【次期会長候補内定】
〔会長・副会長会議(1月14日開催)で次期会長候補に内定した筒井義信・日本生命保険会長への期待を問われ、〕内外に課題が山積する中、わが国の政治情勢も少数与党による政権運営がなされるなど、難しい情勢が続いている。こうした中、筒井次期会長候補には、社会性の視座に立ち、成長と分配の好循環を継続し、公正・公平で持続可能な経済社会を実現してほしい。経済界の代表として大いにリーダーシップを発揮されることを期待している。
〔規制業種である金融業界からの登用であり、政府への率直な要望がしづらいのではないかとの指摘に対し、〕経団連会長は、個別の企業や業界の利害を離れ、日本経済全体の発展と国民生活の向上に向けて、正論を発信していくことが求められている。従って、規制業種の出身であるがゆえに政府に物を申しづらいということは、あってはならないし、そういったこともないであろう。筒井次期会長候補は、規制業種の出身であるからこそ、これまで政治や行政との関わりが多かったであろう。そうした経験を存分に活かし、政府に対して適切に要望していくことのできる方だと見込んで、後を託した。
〔日本生命保険は相互会社で非上場であるため、経団連会長としてコーポレートガバナンスの強化などの旗振り役を担うにふさわしくないのではないかとの指摘に対し、〕会社形態の違いによる影響は心配していない。むしろ、長期的視点に立って、幅広い業種を、公平に偏りなく見られてきたという利点の方が大きいだろう。筒井次期会長候補は、日本を代表する機関投資家の経営トップとして活躍されており、これまでの豊富な経験を基にリーダーシップを発揮してほしい。
〔日本生命保険の会長から退任後に経団連会長に就任予定であることについて問われ、〕これまでの経団連会長の就任時には会社の社長や会長を務められていたことが多いが、他方で就任後すぐに会社の経営の第一線から退くケースもあった。大事なものは肩書ではなく、トップとして会社や業界を牽引した経験や知見である。筒井次期会長候補は、日本生命保険の社長、会長を長く務められており、その点は全く心配していない。また、経団連は、企業のためだけでなく、社会全体のために活動する団体であるため、経験・知見に加えて人格・識見も重要だと考えて後任に選んだ。
〔製造業以外からの選任となったことについて問われ、〕製造業は多くの雇用を創出し、また研究開発を通じてイノベーションを生み出す業種であり、日本の産業のなかで引き続き非常に重要な業種である。
他方、わが国は産業の課題だけでなく、財政規律の低下や格差の拡大・固定化・再生産、生態系の崩壊など、様々な社会課題を抱えている。そうした状況に鑑み、製造業からの選任、あるいは製造業以外からの選任にこだわらずに選んだ。
【選択的夫婦別姓】
〔三原女性活躍担当大臣/内閣府特命担当大臣(男女共同参画)との懇談会(1月14日開催)における、選択的夫婦別姓制度に関する大臣の発言の受け止めと、石破政権への期待を問われ、〕三原大臣の発言は、従来の政府見解よりも踏み込んだ、前向きな内容であった。制度導入に対する各界からの関心の高さや期待の大きさを反映されたのではないか。
選択的夫婦別姓制度は、別姓を強制するものではなく、あくまでも選択肢を増やす制度である。そうした制度の導入に向け、議論が重ねられることを国民も望んでいるだろう。今期の通常国会において、建設的な議論を行っていただきたい。
【日本製鉄によるUSスチール買収】
〔日本製鉄によるUSスチールの買収計画に関する動きについて問われ、〕米国は、経済安全保障の観点からも、自由で開かれた貿易投資を重視する国々とともにサプライチェーンの構築を進めてきた国である。本買収計画は、米国にとって経済合理性のある計画であるにもかかわらず、なぜバイデン大統領が禁止命令を下されたのかよくわからない。これまで米国が自由で開かれた投資環境を維持・標榜する中で、日本から米国への直接投資残高は世界1位であり、雇用創出も世界2位とわが国企業は米国に多大な貢献をしている。こうした中で、今後、米国とどう向き合っていくかという観点から非常に関心の高い問題である。
【金融政策】
〔日本銀行の氷見野副総裁が、次回の金融政策決定会合(1月23日~24日)で、「利上げをするかどうか政策委員の間で議論し、判断したい」と発言したことについて問われ、〕わが国の物価上昇率は2%台を維持しており、物価の動向を見据えながら金利政策を検討することは正常であろう。副総裁の具体的な発言は承知していないが、実質金利がマイナスとなっている国はG7でわが国だけであり、早期に金融政策を正常化させたいという思いではないか。
〔わが国の中立金利の水準や、日本銀行の金融政策について問われ、〕わが国の中立金利の水準がいかほどかは様々な見方がある。経団連が会員企業を対象に実施した「『金利のある世界』に関するアンケート調査」(12月17日公表)では、今後3~5年程度の望ましい短期金利の水準について、「0%超~1%」との回答が最多であり、次点が「1%超~2%」であった。
2024年、わが国のGDPは600兆円を突破し、国内の設備投資は年間100兆円を超え、2年連続で約30年ぶりの高水準の月例賃金引上げが実現した。基調的な物価上昇率も2%程度に近づきつつある。わが国経済は今、デフレからの完全脱却を果たせるかどうかの分水嶺にあり、日銀は適切に金融政策の舵取りをしたいと考えているのではないか。