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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 定例記者会見における十倉会長発言要旨

2025年1月28
一般社団法人 日本経済団体連合会

【金融政策】

〔日銀が金融政策決定会合(1月23日、24日)で追加の利上げを実施したことの受け止めを問われ、〕FRB(米連邦準備理事会)が次回のFOMC(連邦公開市場委員会)で追加の利下げをしない見通しである中、今回の日銀の利上げは良いタイミングであり、適切な判断だったのではないか。

日銀は、賃金、物価、国際金融資本市場の状況を見て判断されたものと承知している。賃金については、経団連も賃金引上げのモメンタムの「定着」に全力で取り組んでいるが、日銀としても、今年の春季労使交渉で一定の賃金引上げが実現すると判断されたのであろう。物価については、基調的な物価上昇率が2%程度に近づきつつあり、行き過ぎた円安に伴い輸入物価が上振れているという傾向を認識されたのではないか。また、トランプ米大統領の大胆な政策が報じられているが、国際金融資本市場は同大統領の現実的な側面に着目して落ち着いており、日銀もこの点を踏まえられたのであろう。

政府・日銀には引き続き、2%程度の適度な物価上昇に向けた政策運営を期待する。その上で経済界も賃金引上げを行い、賃金と物価の好循環を回していきたい。

〔日銀の追加利上げが企業活動に与える影響について問われ、〕名目金利は引き上げられたものの、実質金利は依然としてマイナスであり、金融緩和的な状況が維持されている。したがって、企業の事業活動に対して後ろ向きの影響はないだろう。

〔次回の利上げのタイミングについて問われ、〕年内に追加で少なくとも1回は利上げがなされると思うが、タイミングについては、賃金、物価、国際金融資本市場の動向を見ながら、日銀が適切に判断されるであろう。

【柏崎刈羽原子力発電所】

〔東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向けた動きについて問われ、〕わが国の地理的、地形的な条件を踏まえれば、脱炭素電源である原子力・核エネルギーの活用は不可欠であり、国民の理解醸成が必要である。

東日本大震災が発生した際、東京が大停電にならなかったのは日本海側に位置する柏崎刈羽原子力発電所から電力が供給されていたからである。柏崎刈羽原子力発電所が日本の中心を支えてきたという現実に思いを馳せ、新潟県の方々に対して感謝しなければならない。

今の日本のエネルギー問題の解決に向けて、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働は象徴的な意味合いもあり、非常に重要である。そうしたことから、昨年11月、経団連は現地を視察した。二重三重の安全対策がなされていたとともに、現場の方々の安全意識の醸成に熱心に取り組まれており、非常に感銘を受けた。

今後は県民の代表たる新潟県議会などにおいて、政府や東京電力の意見を聞きながら議論を深めていただき、安全性の確保と地元の理解を大前提に、ぜひ再稼働に向けた動きを加速してほしい。

【フジテレビ】

〔タレント・中居正広氏の女性トラブルへのフジテレビ社員の関与が疑われる一連の問題の受け止め、フジテレビへの期待を問われ、〕最優先すべきは、トラブルにあったとされる女性の適切な保護である。ただし、それと同時に、再発防止策の実施、企業風土の刷新、ガバナンスの改善、の三つを可及的速やかに実行しなければならない。

フジテレビは報道機関であり、企業に問題が生じた際の適切な対応を啓発する立場でもある。第三者委員会の調査結果を踏まえて行うことだけでなく、例えば企業風土やガバナンス体制に対する社内の問題意識を集約し、自己分析するなど、調査と並行して今から実施できることはある。第三者委員会の調査結果を待ってから動くということではなく、フジテレビも既に同時並行で取り組みを始めているのではないか。昨日の会見を見て、全社一丸となって前に進もうという思いを感じることもできた。社内外の信頼回復に向けて、全力で取り組まれることを期待する。

〔一連の問題を受けてスポンサー企業のCM差し止めの動きが広がっていることについて問われ、〕人権に対する意識は近年急速に進んできた。日本のような、世界でプレゼンスを発揮する国では、人権問題に対して嗅覚をより鋭く持つことが求められている。そうした考えのもと、第三者委員会の調査結果が出る前ではあるが、スポンサー企業はCMを差し止めたのではないか。

〔経団連会員企業であるフジ・メディア・ホールディングスで一連の問題が起こったことについて問われ、〕同社への経団連としての対応は未定である。経団連は「企業行動憲章」に、「すべての人々の人権を尊重する経営を行う」ことや、経営者自らが「実効あるガバナンスを構築して、社内、グループ企業に周知徹底を図る」ことを明記している。「企業行動憲章」の周知徹底に引き続き注力する。

〔特定の取締役が長期にわたって就任し続けることがガバナンスに与える影響について問われ、〕一社員であっても、コンプライアンス違反を防ぐ意味で、同じ部署に同じ人を長く配置しないことが一つの方策であることは事実である。その部署に必要不可欠の人材という場合もあり、一概に長くいるから問題とは言えない。一つのポジションや権力が長く続くと落とし穴があるとは古くから言われている。このことに十分意を砕いて、ガバナンス体制を構築していくことが重要である。

【ワーキングプア・就職氷河期世代等】

〔ワーキングプアや就職氷河期世代等への対応や賃金の波及について問われ、〕政府や経団連は、就職氷河期世代の支援を続けてきた。就職氷河期に就職活動をされた方にとっては辛く厳しいことだったと思う。特定の原因があるわけではなく、複合的な要因で就職氷河期世代が生まれてしまったことから学び、今後に活かさなければならない。

定着しつつある賃金引上げのモメンタムについても、経団連会員企業だけが賃金引上げを実施できればよいわけではなく、社会全体に、隅々まで広めていく必要がある。

〔就職氷河期世代の正規雇用者を3年間で30万人増やすという政府の支援プログラム(2019年開始)の目標が未達で2年延長されたものの成果が出ていないことについて問われ、〕高い目標を掲げて取り組んだこと自体はよいが、成果が出なかったのであれば、(目標設定を含め)プログラムの内容等を工夫して取り組む必要があったと思う。政府の「新しい資本主義実現会議」では三位一体労働市場改革の一つに労働市場の流動化・円滑化を掲げており、そうした中でさらに取り組みが進むことを期待する。

以上

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