一般社団法人 日本経済団体連合会
【東北経済】
〔東北経済の現状と見通しについて問われ、〕東北地方の経済は、中長期的に見て期待できるのではないか。東北には、国際卓越研究大学の認定候補に選定された東北大学があり、次世代放射光施設「ナノテラス」のような世界最先端の技術を活用できる施設もある。クリーンエネルギーについては、青森県六ケ所村には使用済み核燃料の再処理工場や、東北の近隣である茨城県には核融合発電の研究開発を行う那珂フュージョン科学技術研究所がある。また、半導体関連産業の集積が進んでいることも特徴である。日本が牽引するであろうグリーントランスフォーメーション(GX)や半導体分野において東北地方に大いに活躍いただきたい。加えて、東北地方には観光名所も多く、楽しみが多いエリアでもある。
〔地域への半導体工場の誘致について考えを問われ、〕半導体は「産業のコメ」と言われるように、非常に重要な産業である。半導体と一口に言っても、最先端品から汎用品まで製品の幅が広いが、ビジネスとして成り立つかどうかということが投資の大きな判断材料となる。そうした観点も踏まえ、中長期的な視点で誘致を検討すべきである。
〔福島イノベーション・コースト構想の受け止めを問われ、〕精力的に進められている印象である。産業界も協力して進めていくべきである。ただしその際、東北全体のイノベーションを牽引する存在である東北大学や、次世代放射光施設「ナノテラス」といった東北地方の強みを総合的に活かしながら、福島イノベーション・コースト構想を進めるのがよいのではないか。
【経済政策】
〔最低賃金の引上げを含め、石破内閣の掲げる経済政策の受け止めを問われ、〕岸田政権下での経済政策を基本的に踏襲するとの方針は妥当であり、安心している。岸田政権の掲げた「新しい資本主義」というコンセプトは、経団連の掲げる「サステイナブルな資本主義」と軌を一にするものであった。岸田政権の経済政策のポイントは二つあった。一つ目は成長と分配の好循環である。経団連は、行き過ぎた資本主義が招いた二つの副作用である生態系の崩壊(気候変動問題)と格差の拡大・固定化を解決するためには、賃金引上げ等の分配政策にも目を配り、成長と分配の好循環を実現することが必要であると訴えてきた。二つ目は、官民が連携して社会課題の解決に資する国内投資を促進しこれを経済成長につなげることである。例えば、GXの実現に資する国内投資を喚起し、そこで培った技術を、アジア・ゼロエミッション共同体構想によって世界に展開していくといった発想である。
最低賃金については、骨太の方針2024で2030年代半ばまでに全国加重平均で1,500円を目指すとした目標をより早く達成とされていたところ、石破首相は目標をさらに前倒しし、2020年代に実現するとされた。経団連は従前より、中小企業が最低賃金の引上げに対応できる環境整備が不可欠だと主張してきた。2020年代の達成にはこれまでより高い引上げが必要になるが、石破首相は、目標達成に向けて、十分な環境整備をできるだけ早く進めていくということであろう。
〔経済財政諮問会議など官邸会議のあり方について問われ、〕経済財政諮問会議に類するような会議体は必要であろう。どのような会議体が望ましいかは大いにご議論いただければと思うが、国の経済と財政のマクロ的な方針について議論し決定するということはしっかりやっていただければと思う。
【原子力政策】
〔女川原子力発電所2号機を再稼働させることの意義について問われ、〕まず東北地方にとって、地域のクリーンエネルギーの確保という意味で非常に重要なことである。
同時に、日本の地形的・地理的条件を踏まえれば、再生可能エネルギーの活用には限界があり、また電力の輸入も困難であるため、わが国全体にとっても、ベースロード電源となる原子力発電の活用は不可欠である。原子力の活用においてネックとなるバックエンドの課題解決を図りながら、安全性の確保と地元の理解を大前提に、原子力発電所の再稼働を進めることは非常に重要である。また、現状、東日本大震災後、再稼働しているのはすべて加圧水型原子炉(PWR)という中で、沸騰水型原子炉として初めて女川原子力発電所2号機の再稼働が実現することは意義深い。
〔石破首相が自民党総裁選立候補時に原発ゼロに近づけていく努力を最大限行うことを掲げていた点を踏まえ、エネルギー政策における新政権への期待を問われ、〕立候補段階で面会した際、石破首相は決して原子力の活用に反対しているわけではなく、電力消費量の増加が予想される中にあって原子力の活用の重要性は十分認識している、とおっしゃっていた。経団連の考え方と大きな齟齬はないと認識している。