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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 定例記者会見における十倉会長発言要旨

2024年9月24
一般社団法人 日本経済団体連合会

【能登地域豪雨】

9月22日から発生した石川県の豪雨被害について、亡くなられた方に哀悼の誠を捧げるとともに、被災された方に心よりお見舞い申し上げる。また、安否が分からなくなっておられる方のご無事を切にお祈りしている。

震災復興の途上の最中に再び被災されることとなり、被災者の方が一層厳しい状況に置かれていることに大変心を痛めている。

経団連では、ボランティア組織とも連携し、1%クラブニュースを通じて、義援金や支援金など、被災者・被災地支援を呼びかけることとしている。今後とも被災者・被災地に寄り添った支援に取り組んでまいりたい。

〔現地への訪問予定を問われ、〕11月開催予定の北陸地方経済懇談会の機会をとらえ、被災地を視察する予定としていた。今回の豪雨の被害状況等を踏まえ、予定どおり現地視察を行うかどうか、現地の方々とよく相談したい。

【解雇規制】

〔自民党総裁選の一部の候補者が言及している解雇規制の見直し、とりわけ整理解雇の4要件の見直しについて考えを問われ、〕判例の積み重ねによって確立された整理解雇の4要件は、労働者の雇用の安定、安心の確保を図ろうという考えが根底にあり、大切にすべきである。

岸田政権の「新しい資本主義実現会議」では、今後、産業の新陳代謝が激しくなる中、労働市場の流動性を高めることが重要との認識の下、①リスキリングによる能力向上支援、②ジョブ型人事の導入、③労働移動の円滑化から成る「三位一体の労働市場改革」を推進している。現在の議論は、そうした労働市場改革の文脈でなされているのであろう。解雇規制のあり方は決して単独の論点として議論すべきものではなく、仮に議論するにしても、労働市場改革を全体的に議論する際の論点の一つとして慎重に取り上げるべきものである。小泉議員も、解雇規制の緩和を主張しているのではないと明確に発言されており、労働市場改革を進めたいという趣旨の一環として解雇規制の見直しに言及されたものと理解している。

〔労働市場の流動化と日本の経済成長との関係性について問われ、〕労働市場の流動化は、働き手全員を労働移動させることではない。産業構造が今後、劇的に変化していく中、働き手が自己実現に向けて主体的にキャリアを形成するための選択肢を増やすことであり、日本経済のダイナミズムに通じるものである。

転職するかもしれない社員に対し、果たして企業がリスキリングを行うのかという議論もあるが、企業内でも働き手は常に変革を求められており、新規事業立ち上げなど社内の流動化を図るためにもリスキリングは必要である。そうした時代にあって、リスキリングなど人材育成に熱心でない企業は求職者に選ばれなくなるだろう。

【中国日本人男児殺害事件】

〔中国・深圳で日本人の男子児童1名が殺害された事件(18日発生)について問われ、〕亡くなった男児に哀悼の意を表するとともに、ご家族に心からお悔やみ申し上げる。将来の日中の架け橋となるかもしれない若い命を失ったことは、両国にとって大きな損失である。

国を開いて経済活動を行うのであれば、進出する海外企業の従業員とその家族が安心して暮らせる環境整備はその国の義務であり、それができなければ円滑な経済活動は行うことができない。中国では日本人が被害に遭う事件が続いており、またSNS等で根拠のない悪質で反日的な投稿が多数なされていると聞く。日中関係が改善に向かい始めた矢先であり、外国人が安心して暮らせる環境を整備してほしい。やはり海外で駐在した人、その家族がその国を好きになるということがお互いの国の交流の基礎だ。そのことにわれわれはいま一度、思いを致すべきだ。

〔日本人が被害に遭う事件等が相次いでいることが企業の対中投資に与える影響について問われ、〕決して良い方向に影響を与えていないことは当然である。このような事件が度々起こるようであれば、自国への投資を損なうことになるだろう。

【中国による日本産水産物禁輸】

〔中国による日本産水産物の全面禁輸について、問題の解決に向けて日中両国が一定の認識を共有した(20日)ことの受け止めを問われ、〕問題の解決に向けて両国が一定の認識を共有したことを歓迎する。今後も科学的、客観的なデータに基づいた議論が重ねられ、着実に全面解禁に近づいていくことを期待している。本件を契機に日中関係が改善に向かっていってほしい。

【立憲民主党代表選挙】

〔立憲民主党代表選挙で野田佳彦氏が新代表に選出された(23日)ことについて問われ、〕野田氏は首相も経験され、政策通で弁の立つ実力者である。自民党との国会での議論に弾みがつくだろうと楽しみにしている。

【日本製鉄】

〔日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収について、米国政府が日本製鉄の再申請を受け付け、判断が先送りされたとの報道について問われ、〕報道は承知している。事実であれば、米大統領選挙後の非常に落ち着いた中で再審査がなされることとなるので、よいのではないか。再審査となる場合であっても、法に基づいて適正に手続きが進められ、公正に判断されることが肝要である。

本件は、米国という多くの外国企業が投資をしている国での事案であり、非常に注目を集めている。引き続き関心を持って注視していく。

【春季労使交渉】

〔来年の春季労使交渉に向けた議論について問われ、〕第1回の経営労働政策特別委員会(20日)では、大橋委員長の下、活発な意見交換がなされた。

来年の春季労使交渉は「定着」のフェーズだと考えている。経団連が賃金引上げに積極的に取り組んだ結果、2023年は「起点」の年、2024年は「加速」の年となった。2025年は、この流れを「定着」させ、サステイナブルにする年にしたい。

そのためにも、労務費を含む適切な価格転嫁が重要との認識をソーシャルノルム(社会的規範)として普及させていく必要がある。中小企業を中心に業績が改善していないにもかかわらず賃金引上げを行った企業が一定程度あると認識している。長年の慣行を1年で完全に変えることは難しいものの、引き続き適切な価格転嫁をソーシャルノルムとすべく取り組んでいく。

【トヨタ自動車・豊田自動織機不正】

〔トヨタ自動車と豊田自動織機がフォークリフトの排ガス不正操作を行っていたとして米国の顧客企業から集団訴訟をされた(22日)との報道について問われ、〕個別企業の事案について詳細なコメントは差し控えたいが、不正はあってはならない。グローバル企業においては、国内で不正が起こると、海外事業にも影響を与えることになる。本事案については、法令に基づき適切に判断されるであろう。

【東日本旅客鉄道不正】

〔東日本旅客鉄道で過去にデータ改ざんの不正があったことについて問われ、〕不正はあってはならないことであり、決められたルールを遵守することは不可欠である。安全を脅かす企業の不正が相次いでいることは由々しき事態である。経団連は企業行動憲章の遵守を会員企業に呼びかけており、今後も徹底して取り組んでいく。

以上

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