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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 定例記者会見における十倉会長発言要旨

2024年9月9
一般社団法人 日本経済団体連合会

【岸田政権】

〔岸田政権の総括を求められ、〕岸田政権は、様々な分野で適切な政策を打ち出し、施策を実行されたと評価している。内政では、デフレマインドの払拭に向けた動きが加速し、日本経済はデフレからの完全脱却の出口に差し掛かっている。外交では、日韓関係の改善や、議長国を務めたG7広島サミットの成功などを通じ、日本の存在を世界に大きくアピールできた。そして何より評価しているのはグリーントランスフォーメーション(GX)の推進である。原発の活用促進や成長志向型カーボンプライシングの導入、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)の主導といった取り組みを、驚くべきスピードで果敢に進められた。心から敬意を表したい。

〔岸田政権下で、政治が経済界に対して賃金引上げを強く要望する形となった直近2年間の春季労使交渉について問われ、〕政府からの求めがなくとも経団連は賃金引上げに積極的に取り組んだと思う。その中で、政府が、賃上げ促進税制の拡充や取引適正化等、賃金引上げに向けた環境整備に本腰を入れて取り組んだことも相まって、近年にない高水準の賃金引上げが2年連続で実現したと考えている。

他方で、急激な賃金引上げの流れの中で、中小企業を中心に、人材獲得のためにやむを得ず賃金引上げを行った企業もあると認識している。中小企業を含め今後も賃金引上げを継続していくためには、労務費を含む適切な価格転嫁が重要との認識をソーシャルノルム(社会的規範)として普及させていく必要がある。

【自民党総裁選挙】

〔自民党総裁選への期待を問われ、〕今回の総裁選には非常に多くの方が立候補されている。ぜひ国民にわかりやすい切り口で、短期的な政策だけでなく中長期的な政策も、そして、内政だけでなく外交も含めて、広範な議論を展開いただきたい。

〔経団連として特定の候補を支持する考えはあるかと問われ、〕特定の候補を支持する考えはない。候補者間での活発な政策議論を期待している。

〔石破議員、小泉議員との面会(9日)でのやり取り、とりわけエネルギー政策に関するやり取りについて問われ、〕両議員には、日本の将来に関する政策議論を期待していると申し上げた。石破議員は、地方創生や格差是正の問題に関心が高いと感じた。小泉議員は非常にフレッシュな印象であり、次世代のホープとしての活躍を期待しているとお伝えした。

エネルギー問題について、資源を持たない島国であるわが国にとって、再生可能エネルギーと並んで原子力の活用は非常に重要であるということを申し上げた。石破議員は、原発ゼロを掲げていると報道されているが、決して原子力の活用に反対しているわけではない、との発言があった。小泉議員も、エネルギー政策の重要性を認識しておられた。

〔総裁選の争点となっている選択的夫婦別姓制度の導入について問われ、〕「万機公論に決すべし」であり、同制度の導入に対する考えが議論の一つの軸になっていることを大いに歓迎している。世間的な関心も高まっており、議論の行く末を注視したい。

〔一部の候補者が言及している解雇規制をめぐる議論について考えを問われ、〕個々の働き手による主体的なキャリア形成の推進や、雇用の流動化に向け、政府はまさに今、労働市場改革を推し進めようとしている。必要なことは、能力開発・スキルアップの推進、雇用のマッチング機能の強化、雇用のセーフティネットの整備といった施策を総合的に進めることであり、解雇規制のあり方については、その中の論点の一つである。

〔一部の候補が言及している金融所得課税について考えを問われ、〕そのような報道は承知している。石破議員は、一般の方々も含めて広く金融所得に課税するのではなく、われわれも主張している「分厚い中間層の形成」や格差是正の観点から、とりわけ所得の極めて多い方々を念頭に置いているのではないか。「貯蓄から投資へ」という流れができている中で、投資減退が生じないようにしないといけない。

〔茂木議員が、岸田政権下で決定した防衛力強化や、子ども・子育て支援金制度の創設を増税ゼロで実現するとしたことについて問われ、〕岸田政権下での決定事項であったため、少し驚いた。政策の方向性はこれまでと同じで、経済成長によって増える税収で財源を賄うということであるが、どの程度の期間で実現するかなど、明らかでない点があり評価は難しい。

【立憲民主党代表選挙】

〔立憲民主党代表選挙への期待を問われ、〕自民党総裁選と立憲民主党代表選が同時期に行われるが、日本の行く末を左右する重要政策について、間髪入れずに両党内で政策議論が交わされることとなるため、注目している。立憲民主党代表選に当選1回の女性議員が出馬したことも非常に意義深い。

【日本製鉄】

〔日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収について、バイデン大統領が中止命令を出すとの報道の受け止めを問われ、〕安全保障と自由貿易は両立するものであってほしいし、米国にはそのリーダーであってほしい。米国は非常に多くの外国企業が投資をしている国であり、今回の問題は非常に注目を集めている。米国大統領選挙に左右されることなく、公正で適正な手続きが進められることを強く願う。

〔橋本副会長から本件に関してどのような話があったかを問われ、〕個社の話であり詳細は差し控えるが、本日(9日)の会長・副会長会議開始前に話があった。日本製鉄としては本買収計画がUSスチールの競争力強化、および米国の産業界の発展に資するものだと考えているが、現在は計画が進むかどうかの瀬戸際にあり、気をもんでいる、ということであった。

【大阪・関西万博】

〔万博開催期間中のIR工事のあり方について現在の考えを問われ、〕万博とIRは二者択一ではなく、いずれも成功させたい。ただし、IR工事が万博の運営に支障をきたさないことは重要である。現在、政府の音頭の下、現実的な解を懸命に探っているところである。解は存在すると考えている。

【為替】

〔適正な為替水準について問われ、〕経済のファンダメンタルズを適切に表している水準という意味では、1ドル150円を超える場合には行き過ぎた円安と申し上げてきた。どの程度の水準が適正かを判断することは非常に難しいが、現時点での多くの企業の想定為替レートは1ドル145円前後ではないか。

【セブン&アイ・ホールディングス】

〔セブン&アイ・ホールディングスがカナダのアリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けていることの受け止めを問われ、〕わが国が貿易投資立国を目指す以上、相互主義の観点に立って海外からの買収提案に何か言うべきものではないが、円安の影響もあると思う。M&Aで重要なことは、買収が真に企業価値向上に資するものかということであり、真摯な議論がなされることを望んでいる。

以上

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